研究課題/領域番号 |
19K18805
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
原田 祥太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10824740)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 直線加速度刺激 / 卵形嚢 / 球形嚢 / 前庭動眼反射 / P2X2KOマウス |
研究実績の概要 |
今回の研究では、マウスに対する耳石器機能評価を直線加速度刺激を加えた際の前庭動眼反射を用いて行った。直線加速度刺激は、1.8mの直線レールを往復する装置を作製し、マウスを移動方向が両耳間軸と鼻-尾軸間が平行になるような2パターンで配置し、0.21から1.31Gまでの加速度を5段階に分け刺激を与えた。直線加速度刺激を加えた際、両耳間軸方向と鼻-尾軸間方向に移動させた時、共にマウスの眼球は主に垂直成分の動きを認めた。この眼球運動は、直線移動により流れた景色を追うような代償した眼球の動きではなかった。この眼球の動きは、直線加速度刺激により生じるGIA(gravito-inertial acceleration)に対して、耳石器の有毛細胞がtiltすることにより生じているものと考えた。そこで静的に耳石器に重力加速度を加えるtilt実験を行ったところ、直線加速度刺激を加えた際の眼球運動と類似した反応が見られた。このことから直線加速度刺激による前庭動眼反射は、GIAに対して耳石器がtiltすることにより生じたものと分かった。直線加速度刺激による前庭動眼反射は、耳石器の球形嚢と卵形嚢の両方からの入力により眼球運動を生み出している事も分かった。これらの実験からマウスに対する直線加速度刺激を加えた際の耳石器機能評価方法は、眼球の垂直成分の偏倚角度を比較することによりできることが分かった。 そこで、前庭器にも存在する陽イオンレセプターであるP2X2レセプターに対するKOマウスをに対する耳石器機能を評価した。同週齢のP2X2KOマウスと野生型マウスの眼球の垂直成分の偏倚角度を比較したところ、2群間に差は認められなかった。このことから、P2X2KOマウスでは、耳石器機能には異常がないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
直線加速度刺激に対するマウスの眼球運動を生じさせる機序、直線加速度刺激時の耳石器動眼反射の評価基準を決定することに時間を要した。さらに当飼育施設の縮小によりマウスの供給が低下したため実験の進行の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
P2X2KOマウスでは、前庭機能の一つである耳石器機能の低下は認められなかった。以前当研究室で半規管機能低下が報告されており、今後は半規管機能低下を生じさせる原因が、当初想定していたカリウムイオン濃度、内リンパ腔電位の変化によるものか、その原因究明を可能な限り行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況の遅延と研究成果を論文に投稿する際の費用として次年度に助成金を繰り越した。
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