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2019 年度 実施状況報告書

声帯瘢痕に対する新規エストロゲン治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K18813
研究機関京都府立医科大学

研究代表者

椋代 茂之  京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00821860)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードエストロゲン / ERα / GPR30 / TGF-β/Smad signaling / 声帯瘢痕 / 声帯線維芽細胞
研究実績の概要

声帯瘢痕は難治性線維化疾患であり、音声障害による生活上のダメージは大きい。研究代表者はこれまでステロイドホルモンが声帯線維芽細胞の細胞外マトリックス産生能やTGF-β/SMAD signalingに及ぼす影響に注目して研究を行ってきた。近年になって性ステロイドに属するエストロゲンが創傷治癒に対して保護作用を有することが報告されており、声帯の創傷治癒や瘢痕形成への治療効果が期待されるが、その機序は不明である。
当該年度に我々は免疫染色法によりラット声帯線維芽細胞がエストロゲン受容体α(ERα)に加えて膜結合型エストロゲン受容体(GPR30)を発現することを見出した。これはエストロゲンが声帯線維芽細胞に対して核内受容体を介する古典的なgenomic作用のみならず、膜型受容体を介したnon genomic作用を及ぼす可能性を示している。声帯組織においてもERαとGPR30の発現を確認した。
次にTGF-β刺激した培養声帯線維芽細胞にエストラジオール(E2)を投与して、TGF-β/Smad signalingにおける遺伝子発現の変化をqRT-PCRを用いて検討した。4時間後にSMAD7は増加、24時間後にCol1A1は低下し、E2が抗線維化作用を有する可能性が示された。またこれらの変化はERαアンタゴニスト(ICI182,780)とGPR30アンタゴニスト(G36)の投与により抑制される傾向が示され、エストロゲン受容体を介した反応であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

声帯線維芽細胞の初代培養やその免疫染色、qRT-PCRは手技的に安定して施行できている。GPR30の発現は今回新たに見出された結果であり、その結果をもとに実験スキームを発展させている。

今後の研究の推進方策

声帯正常組織や損傷部におけるエストロゲン受容体の発現や分布を検討する。
ラット声帯瘢痕モデルを用いて声帯瘢痕へのE2注入効果を組織学的に検証する。片側声帯を損傷し、その直後・7・60日後にE2を注入する。コントロール群として生食注入群を設定する。注入30日後に喉頭を摘出して薄切切片を作成する。それらをHematoxylin-Eosin染色、Elastica van Gieson染色、Alcian Blue染色、免疫組織化学法(Ⅰ型コラーゲン・Ⅲ型コラーゲン)に供し、損傷側の声帯粘膜固有層の変化を正常側を内因性コントロールとして定量的に解析する。

次年度使用額が生じた理由

当該年度には培養細胞を用いた実験を遂行したため細径内視鏡システムやモニターの購入をみあわせた。そのために物品費に未使用額が生じたが、声帯瘢痕モデルを用いた実験は次年度以降に予定しており、未使用額をその経費として使用したい。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Quantifying vocal fold wound‐healing biomechanical property changes2019

    • 著者名/発表者名
      Dion Gregory R.、Guda Teja、Mukudai Shigeyuki、Bing Renjie、Lavoie Jean‐Francois、Branski Ryan C.
    • 雑誌名

      The Laryngoscope

      巻: 130 ページ: 454~459

    • DOI

      10.1002/lary.27999

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Implementing Efficient Peptoid‐Mediated Delivery of RNA‐Based Therapeutics to the Vocal Folds2019

    • 著者名/発表者名
      Mukudai Shigeyuki、Kraja Iv、Bing Renjie、Nalband Danielle M.、Tatikola Mallika、Hiwatashi Nao、Kirshenbaum Kent、Branski Ryan C.
    • 雑誌名

      Laryngoscope Investigative Otolaryngology

      巻: 4 ページ: 640~644

    • DOI

      10.1002/lio2.310

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Estradiol Ameliorates Vocal Fold Fibrosis by Modulation of Estrogen Receptor-Mediated TGF-β1 Signaling2020

    • 著者名/発表者名
      Satomi Ozawa, MD; Shigeyuki Mukudai, MD, PhD; Yoichiro Sugiyama, MD, PhD; Ryan C. Branski, PhD; Shigeru Hirano, MD, PhD
    • 学会等名
      ombined Otolaryngology Spring Meetings 2020
    • 国際学会
  • [学会発表] SMAD3抑制による声帯瘢痕治療におけるリピトイドの比較検討2020

    • 著者名/発表者名
      椋代茂之、木下翔太、小澤聡美、布施慎也、橋本慶子、金子真美、杉山庸一郎、平野滋
    • 学会等名
      第32回日本喉頭科学会総会・学術講演会
  • [学会発表] ラット声帯創傷治癒に対するエストロゲン作用2020

    • 著者名/発表者名
      小澤聡美、椋代茂之、木下翔太、布施慎也、橋本慶子、金子真美、杉山庸一郎、平野滋
    • 学会等名
      第32回日本喉頭科学会総会・学術講演会

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公開日: 2021-01-27  

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