研究課題
頭頸部癌をはじめ、様々な癌種で癌細胞の腫瘍内不均一性と腫瘍組織内に存在する免疫細胞の組成や性質が癌の進展や治療抵抗性と関わることが知られている。申請者はこれまでに、一枚のホルマリン固定パラフィン包埋切片から12種類のエピトープを免疫組織化学で解析できるmultiplex immunohistochemistry (IHC)ならびにその画像定量化技術image cytometryを開発し、3枚の切片から定量化可能な14種類の免疫細胞の組成や性質を統計解析することで、癌の亜分類や予後と相関する腫瘍の免疫的性質を報告してきた。本研究では、このmultiplex IHC/image cytometryを用いて、癌の様々な悪性形質を評価可能な頭頸部癌細胞解析パネルを作成・検証し、癌細胞と免疫細胞の両者を、細胞頻度と位置分布情報を含め統合的に解析し、組織バイオマーカーを同定することを目的とする。令和2年度は前年度に作成した1枚の切片で癌の悪性形質Cancer Hallmarksを多角的に検証できるパネルを用いて、導入化学療法前後の検体における癌の悪性形質の変化の解析を進めた。さらに、当初の計画通り、導入化学療法前後の検体における免疫的微小環境の特性についても定量的解析を行い、次年度以降の両者の相関解析に向けた準備を進めた。これらの研究成果の一部は、第44回日本頭頸部癌学会におけるシンポジウム、第38回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会におけるパネルディスカッションで発表し、和文誌での筆頭論文1報、Cancer Scienceを含む英文論文4報で報告した。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度に予定していた癌細胞解析パネルによる解析が進行し、次年度以降の免疫細胞の染色と解析にむけた準備も予定通り進行した。
・Cancer Hallmarkパネルによるmulitplex IHC/image cytometry解析:令和2年度に構築した癌細胞解析パネルによる予備的染色結果に基づき、進行頭頸部癌検体36例における染色、解析を行う。・細胞数情報に基づいた癌の悪性形質と免疫細胞組成の相関性の解析[アプローチA]・細胞位置・分布情報に基づいた癌組織の不均一さと周囲免疫細胞の解析[アプローチB]昨年度に解析したLymphoid & myeloid免疫細胞パネルによるmulitplex IHC/image cytometry解析結果に基づき、上記のCancer Hallmarkパネルでの解析結果との相関を検討する。癌細胞ならびに免疫細胞の細胞頻度と位置情報の包括的な情報を用い、癌細胞側の特性と免疫細胞側の特性の相関を解析していく。包括的な情報を解析する上で、クラスタリング解析を含む細胞数を重視した解析(図2)(アプローチA)と位置・分布情報を重視した解析(図3)(アプローチB)の2種類の戦略で進める。その上で、両方のアプローチから得られた情報を統合して、包括的に癌細胞と免疫細胞の相関を検討する。アプローチBが計画通りに進行せず、有意な差を検出しなかった場合には、業績1ですでに確立し、より確実に解析可能な、細胞数に重点をおいたアプローチAを優先して対応する。クラスタリング解析やFalse Discovery Rate Adjustmentなどの各種統計解析については、申請者が習得済みであるプログラミング言語Rを用いて行う。
上記の通り当初の研究計画通りに進行したが、4578円が端数として生じたため、次年度の免疫組織化学に用いる抗体購入費に当てる予定である。
すべて 2020 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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