感冒後嗅覚障害は嗅覚障害の原因の中で、2番目に多く、特に閉経期前後の中高年の女性に多い疾患とされているが、その年代の女性に多い理由はわかっていな い。 研究者はこれまで卵巣摘出したマウスを用いて、嗅上皮傷害後の再生へのエストロゲンの影響を観察してきた。その結果、卵巣摘出のみではマウスの嗅上皮に対照と有意な変化は生じなかったが、メチマゾールを用いて嗅上皮の変性を生じさせた後の再生過程において、最も再生の活発な障害2週目において卵巣摘出マウスで再生が遅延することが判明した。この結果から、低エストロゲン状態が嗅細胞の再生に何らかの影響を及ぼしているものと結論づけた。また老年マウスでは嗅上皮傷害後の再生は対照群に比して遅延することが報告されている。 本研究の目的は、実際臨床で中高年女性を想定し、老年マウスにおいて卵巣摘出群と擬手術群と嗅上皮の再生速度を比較することで閉経および加齢によって嗅上皮の再生速度が遅延するメカニズムを解明することである。 閉経老年マウスにおける嗅上皮傷害後の再生過程を観察する実験の為、卵巣摘出術(N=5)ならびに擬似手術(N=5)を行った。その後マウス計10匹を1年間長期飼育し、HE染色や嗅上皮にある成熟嗅細胞であるOMP(olcactory marker protein)染色等をし、組織学的な検討を行った。
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