研究課題/領域番号 |
19K18824
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
佐藤 満雄 近畿大学, 大学病院, 医学部講師 (40580775)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光遺伝学 / 髄鞘脱分極 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、神経を取り巻く髄鞘の脱分極が神経系へ及ぼす影響を解析することである。そのために、髄鞘にChR2(光感受性非選択的陽イオンチャネル)を発現させた遺伝子改変マウスを用いる。ChR2が聴神経の髄鞘に発現しているマウスでは、青色LEDの蝸牛への光照射により、脳波として検出される神経伝導が軽度早くなることがin vivo実験でわかった(蝸牛への電気刺激はバイポーラ刺激で700μA. N=3; 平均差異0.12 ms)。免疫染色からは、ChR2はさらに末梢の神経であるラセン神経のシュワン細胞にも発現しているため、現時点では、両方ともの髄鞘の脱分極刺激による結果として捉えている。ただ、ChR2の発現量がラセン神経のシュワン細胞では少なく、聴神経のグリア細胞で多いという免疫染色結果からは、後者の影響がより大きく影響していると考えられた。髄鞘の脱分極による神経刺激の検討をより限られた領域で行うため、in vitro での青色光照射の有無による聴神経の神経伝導速度変化の測定を試みたが、対象となる神経が非常に小さく、現時点では成功していない。現在、ChR2が発現した坐骨神経を用いた研究でまずは検討を行っている。 坐骨神経に関しては、刺激電極の工夫を行い、測定は安定してきたが、測定し得た遺伝子改変マウスでは神経伝導速度の変化は認めなかった。まだ、実験数がN1で、衰弱傾向のマウスであったことから、次に期待したい。シュワン細胞へのパッチクランプ測定も行っているが、データ取得にまでは至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は臨床6ー7割、実験3ー4割の配分を予定していたが、COVID-19のパンデミックがあり、臨床に多くの時間を割かなければいけない状況であった。まだこの状況は続きそうではあるが、改善に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
聴神経に関する実験はin vitroでは困難であり、基本的にはin vivoで行い、解析を続ける予定である。聴神経だけの刺激方法として、蝸牛外側骨を破壊し、聴神経より末梢を切断した上での測定を考えており、現在、計画中である。 坐骨神経に関しては、ChR2発現マウスが生まれ次第、神経伝達速度測定を行い、光照射による髄鞘の脱分極による神経への影響を解析したい。double transgenic マウスであるため、目的のマウスが生まれる確率が低いので、両足を用いた実験でN数を増やしていきたいと考えている。それに並行して、通常のマウスでの坐骨神経髄鞘に対するパッチクランプ測定を行い、目的マウスでの測定へとスムーズに移行できる準備をしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で、臨床の仕事が占める割合が大きく増えてしまった。残念ながらこの状況はしばらく続きそうではあるが、この体制下にも慣れてきたので、次年度は実験計画を一段と進めていきたい。
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