研究課題/領域番号 |
19K18826
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
董 震宇 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (00443945)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脈絡膜血管新生 / 線維芽細胞増殖因子9 / 血管新生抑制 |
研究実績の概要 |
滲出型加齢黄斑変性(age-related macular degeneration、AMD)は脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization、CNV)により網膜下出血と吸収を繰り返し、最終的に失明にいたる疾患である。CNV形成においては血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor,VEGF)をはじめとした種々のサイトカインが複雑に関与しているが、いまだにCNV形成のメカニズムが完全に解明されていない。一方、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factors,FGF)9は虚血や骨損傷治癒における血管新生を促進することが報告されているが、CNV形成における関与は不明である。本研究においてCNV形成におけるFGF9の関与を明らかにし、FGF9が新規治療ターゲットとなり得るかを検討する。
本年度は血管新生のex vivoモデルであるchoroidal sprouting assay(CSA)を使用しFGF9による脈絡膜微小血管内皮細胞増殖促進効果およびFGF9抑制による脈絡膜微小血管内皮細胞増殖抑制効果を調べることとした。具体的に6週齢のC57BL/6Jメスマウスから眼球摘出し、角膜輪部に近い強膜-網膜色素上皮(以下、移植片)を採取し、既報に則って培養した。培養中移植片から発生してくる新生血管の面積を測定し、各投与群およびコントロール群で比較を行った。結果、CSAにおいてFGF9が脈絡膜微小血管内皮細胞増殖を促進する傾向はみられたが、コントロール群との比較で有意差はみられなかった。この結果を踏まえてCSAを用いたFGF9抑制実験を行わなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
choroidal sprouting assay(CSA)を確立した。当初の予想と違いCSAにおいてはFGF9による有意な脈絡膜微小血管内皮細胞増殖促進効果はみられなかったが、初年度の実験で使用されたCNVモデルマウスとは実験系統が異なるためこのような結果が生じた可能性があると考えた。またCNVでみられる血管新生には血管内皮細胞以外に周皮細胞なども関与しており、今回のCSAの実験結果からはFGF9によるCNV形成促進は血管内皮細胞に対する直接な効果でない可能性も示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
CNVモデルマウスを用いてFGFレセプター(FGFR)による細胞内シグナル経路を調べる。レーザー照射により活性化した経路が確認できればinhibitorを用いたシグナル阻害によるCNV抑制が可能かを調べる。さらにFGF9ノックアウトマウスを用いてCNVモデルを作成しFGF9抑制によるCNV抑制効果、免疫染色にてマウスCNVにおけるFGF9の免疫局在を確認する
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に沿って、順調に研究費が使用されてきたが、一部研究費が残存し次年度の研究費として繰越をおこなった。
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