研究課題/領域番号 |
19K18829
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 航 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20646442)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 神経突起 / 視神経萎縮 |
研究実績の概要 |
東北大学病院通院中の常染色体優性視神経萎縮症患者からiPS細胞を樹立した。免疫細胞染色で多能性幹細胞マーカーであるOCT3/4陽性であることを確認し、導入した山中4因子が存在していないことをPCR法にて確認した。また、PCR法にて樹立したiPS細胞で患者と同様の遺伝子変異が存在することを確認した。既報の方法に基づいて3次元立体網膜組織構造への分化誘導を行った。正常人iPS細胞由来の網膜組織構造と同様の分化誘導過程を示し、分化誘導30日目には正常人iPS細胞由来の網膜組織構造と同等の層構造を認めていた。免疫組織染色で、視細胞マーカーであるCRX及び網膜神経節細胞マーカーであるPou4F2及びRBPMSの発現を網膜組織構造内に確認した。分化した網膜組織からDNAを抽出し、PCR法で遺伝子変異が存在することを確認した。また、RT-qPCR法を用いて網膜細胞が発現していることを確認した。常染色体優性視神経萎縮症の表現型を確認するため、立体網膜組織培養により神経突起伸長を観察すると、正常人iPS細胞由来立体網膜組織の神経突起と比較し有意に密度が低く、特に細い神経突起が減少していることが確認された。神経伸長の長さに関しては有意差を認めなかった。また、立体網膜組織中の網膜神経節細胞数を計測すると正常人iPS細胞由来網膜組織と比較して有意差を認めておらず、網膜神経節細胞の発生にOPA1遺伝子異常は関与していない可能性が示唆された。今後はOPA1遺伝子異常がどのような機序で神経系に影響を与えるのかを検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾患iPS細胞の樹立は病態によって難しいことが知られているが、常染色体優性視神経萎縮症患者からiPS細胞を樹立することが出来ている。ヒト多能性幹細胞の分子マーカーであるOCT3/4の陽性を認めており、導入遺伝子が存在していないことも確認済である。また、立体網膜組織への分化誘導も正常人由来のiPS細胞と著変なく行うことが可能であった。免疫染色及びRT-qPCR法で網膜細胞の存在を確認し、分化誘導に問題はないと考えられる。 神経突起に関して、正常人由来のものと比較すると長さに関しては有意差はないが密度、特に細い神経突起の減少が優位に認められており、臨床症状と似た表現型をvitroで得る事が出来ている。以上より、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はOPA1遺伝子が神経細胞に引き起こす異常所見を確認するため、ミトコンドリアの異常に関する実験を行う。具体的には、ATP産生量、ROS産生量の測定およびPINK1やATGなどの発現を確認し、ミトファジーの異常がないかどうかを検証する。 また遺伝子異常に対してCRISPR-cas9を用いた遺伝子編集を行い、遺伝子異常部分をレスキューすることで神経突起及びミトコンドリア異常が改善するかどうか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度のゲノム編集によるiPS細胞樹立のために計上した。
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