常染色体優性視神経萎縮症患者(ADOA1)でc1305_1305+13delGGTAAGGGTTGCAAの遺伝子欠失を認める患者の皮膚よりiPS細胞を樹立した。多能性幹細胞であることの確認を抗Oct3/4抗体での免疫染色で確認した。樹立したiPS細胞から既報に軽微な修正を加えた分化誘導方法で人工的3次元立体網膜組織へ分化誘導した。分化誘導40日目の立体網膜組織から凍結切片を作製し、網膜神経節細胞マーカーであるPou4f2で免疫染色を施行した。ADOA1患者及び正常人由来立体網膜組織(ADOA1群、正常人群)でPou4F2陽性細胞数を比較したところ有意差は認めず、網膜神経節細胞の発生に明らかな差を認めなかった。分化誘導50日目のADOA1群及び正常人群で神経培養を行い、神経突起の密度を比較検討したところ有意にADOA1群で神経突起束及び密度の減少を有意に認めていた。また、ADOA1群及び正常人群に対してグルタミン酸障害(glutamic acid:500uM)及び酸化ストレス障害(hydrogen peroxide:100uM)を添加したところ、ADOA1群ではRt-qPCR法でPou4f2の発現が有意に減少していた。Alamar blue assayでグルタミン酸障害後の細胞生存率を比較検討したところ、こちらもADOA1群で有意に生存率が低下していた。CD90 MicroBeadsを用いて各々の立体網膜組織から網膜神経節細胞を単離し、ATP Detection Assay KitでATP産生量を測定したが、ADOA1群と正常人群に有意差を認めなかった。また、電子顕微鏡で立体網膜組織中の神経線維内のミトコンドリアを観察したところ、ADOA1群でミトコンドリアの極小化及び数の減少を認めていた。これらの結果からADOA1の網膜神経節細胞ではミトコンドリア異常により神経障害に脆弱な状態であることが示唆された。
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