ヘルペスウイルスは9種類存在し、それぞれが様々な眼感染症に関連し、患者背景など臨床像は多様である。例えば、サイトメガロウイルス(CMV)は免疫不全状態で網膜炎を起こすことが知られてきたが、近年、免疫正常者の角膜炎や前部ぶどう膜炎に関わることが分かってきた。さらにCMVのgB遺伝子型は、角膜炎と前部ぶどう膜炎では類似している一方で、網膜炎とは異なることが報告された。CMVの他の遺伝子や、他のヘルペスウイルスについても、疾患の違いとウイルス遺伝子型に関連がある可能性が考えられている。 本研究では、ヘルペスウイルス眼感染症の眼検体を用いて、各ヘルペスウイルスの遺伝子型を調べ、疾患との関連を検討した。 ヘルペスウイルス眼感染症(角膜炎、前部ぶどう膜炎、網膜炎)患者より診断目的で採取した眼検体(角膜擦過物、前房水、硝子体液)より抽出したDNAを使用し、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスの遺伝子型を調べた。各ヘルペスウイルスに特異的なプライマーでウイルス全ゲノムをロングPCR で増幅し、ウイルス遺伝子型を解析した。眼検体は微量であり、多くをヒトゲノムが占めるため、ウイルスゲノム増幅およびシーケンスが困難であった。本研究期間内では、ウイルス遺伝子型と各疾患との関連性を見出すことができなかった。引き続き、各ヘルペスウイルスのシーケンスデータを蓄積し、細胞への感染に必要な遺伝子を中心に遺伝子型の解析を行い、臨床病型との関連について検討していく。
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