滲出型加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は、網膜中心の黄斑部に生じる新生血管からの滲出性変化、出血を特徴とする進行性の疾患で、先進諸国においては特に失明原因として重要な疾患である。本邦においても患者数が増大しており、今後も高齢社会の進行に伴い、患者数のさらなる増大が見込まれている。AMDはこれまでは眼球中央部の黄斑部に限局した病変と考えられ、既存の治療も光線力学療法や眼球内への薬剤投与など眼球のみをターゲットにしたものとなっている。本研究は眼球の範囲を超えて全身の自律神経機能異常がAMDの病態に関与しているとの仮説を検証することとしている。これまでに、起立負荷試験の手法を用いてAMD患者と対照健常者の自律神経の働きの差異について検討し、AMD患者では対照健常者と比較して交感神経反射が低下しているという結果を得ている。また、近年AMDと考えられていた疾患の中にpachychoroid NVと呼ばれる新たな病態が含まれていたことがわかってきている。Pachychoroid NVは従来のAMDとは異なり、厚い脈絡膜や脈絡膜毛細看板の変性、脈絡膜血管透過性の亢進など特異な脈絡膜変化が共通して認められる。脈絡膜の血行動態は網膜とは異なり、自律神経支配をうけており、PachychoroidNVと自律神経との関連も非常に重要な検討項目である。Pachychoroid NVの治療成績を第127回日本眼科学会総会で発表した。
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