本研究は近視性牽引黄斑症への新しい低侵襲なレーザー治療法を開発することを目的としている。最終年度にあたる本年度は、臨床研究実施計画に準じ、臨床研究への患者組み入れを継続し、2名の患者の登録を行った。前年度に登録された3例と合わせて、全5例が研究参加期間を終了し、予期しない重篤な合併症はなく経過観察を受けた。結果として、レーザー照射直後の網膜出血といった一過性の合併症を観察することができた。また、網膜表面の内境界膜の硬度についての知見が得られた上で、安全な治療を実施する上では、焦点調整などのレーザー機器の改良や、リアルタイムイメージングなどのナビゲーションの導入が必要であることがわかった。上記の様な知見を総括して、近視性牽引黄斑症への低侵襲レーザー治療の先行研究結果として学術論文誌への投稿を開始した。 また、前年度に学会発表を行った臨床研究について、一般学術誌であるScientific Reports誌へ掲載することができた。論文は、近視の小児及び若年眼の硝子体と網膜の界面にて起こる病的変化を画像で観察して報告したものであり、本研究の目的である低侵襲治療法の有効性を立証するものである。 さらに、本年度中に、近視眼の黄斑部硝子体の3次元画像化に取り組んだ上で、硝子体液化腔の容積と表面積を計測する新しい方法を確立した。そして、容積の変化と液化腔の結合の関係性について、新しい知見を得ることができ、本結果についても学術論文誌への投稿を開始することができた。
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