D-セリンは神経伝達物質としてNMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)の活性制御に関わっており、D-セリンの過剰な産生によりNMDARの過剰な活性化を原因とする神経細胞死が生じることが示唆されている。また、筆者らは過去にD-セリン合成酵素であるセリンラセマーゼ(SRR)が糖尿病網膜症における神経細胞死の増悪に関与することを報告した。しかしながらD-セリンの役割の解明については基礎研究にとどまっており、D-セリンの制御による糖尿病網膜症の治療方法は確立されていない。さらに、D-セリンと網膜障害との直接の関係性は明確にされていない。そこで本研究では、糖尿病によって網膜変性を生じる動物モデルにおいて、D-セリン合成酵素であるSRRの酵素活性阻害薬を継続投与した際に、眼内のD-セリンはどのように変動するか、網膜変性の程度にどのように影響を与えるかについて解析を試みた。まずストレプトゾシン(STZ)腹腔内投与によるインスリン分泌低下型糖尿病モデルを作成する目的で、C57BL/6マウスを継続飼育した。マウス等動物の取り扱いに関しては、富山大学動物実験指針に基づいて行った。また、糖尿病モデル動物を作成後、マウスの眼球を摘出し網膜のパラフィン切片作製により網膜神経細胞障害の解析を行うため、麻酔薬およびHematoxylin Eosin(HE)染色試薬の調整を行った。さらにマウス個体ごとに網膜障害を組織学的に評価した。D-セリンの測定方法および網膜障害との関連性については検討中である。
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