本研究では、加齢黄斑変性(AMD)およびその類似疾患である中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)における遺伝的要因と治療反応性や臨床所見を調査し、その原因や治療予後について調査する事を目的としていた。 現在AMDにおける治療の主体である、抗血管内皮増殖因子剤(抗VEGF剤)の治療反応性について調査することは今後の病態解明の一助となると考えた。抗VEGF剤の一つであるラニビズマブについては、治療の反応性について報告はあるが、より新しい薬剤であるアフリベルセプトの1年以内の再治療の有無については報告がなく、我々は遺伝的要因との関連について調査した。その結果、AMDの感受性遺伝子でもある ARMS2 A69S(rs10490924)とCFH(rs1329428)のリスク塩基が再治療の必要性に関与していることが分かり、論文報告を行った。これは、患者の感受性遺伝子、特にARMS2とCFH遺伝子多型を調べることにより、治療レジメンの選択、診療間隔の決定などを症例にあわせて調整する、いわゆるprecision medicineをより発展させることができる可能性がある。 また、CSCの病因についてはまだ完全には解明されていないが、男性の性別、性ホルモン、ステロイドへの曝露、および妊娠に関与しているとの報告がある。この事から、生物学的性差はCSCの病因に関与している可能性がある。そこで我々は、CSCの臨床的特徴と遺伝的要因を調査し、男女の間で比較・検討した。その結果、臨床的特徴として男性は女性よりも、若年で発症し、中心窩下脈絡膜が厚く、中心網膜厚が薄く、descending tractという臨床所見が多いという結果だった。これらの結果から、病因解明の一助となることが予想される。
|