研究実績の概要 |
白内障術後眼内炎予防対策として、術前抗菌薬点眼、術中抗菌薬点滴、術終了時においては抗菌薬結膜下注射や前房内投与が施行されている。これらの眼内炎予防効果の優劣を検討するため、既報の文献を用いてネットワークメタ解析を行った。その結果、抗菌薬の前房内投与のみが眼内炎発症率を下げることが判明した。一方、結膜嚢内から検出される眼内炎に関連する菌種はStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, CNSが主体でありキノロン剤への耐性化が進んでいることが判明した。 前房内投与にはキノロン剤やセフェム系製剤が使用されており、眼内炎発症率を下げる有意な効果が認められたが、今後想定される起因菌のキノロン製剤への耐性化を考えると抗菌薬に頼らない手法の確立がのぞまれた。そこで抗菌薬に頼らず術中にヨードを用いて術野を減菌する手法としてtimely iodine法を開発し、術中の術野から検出される細菌種及び量の検証を行った。以上より、眼内炎予防プロトコールとしては、耐性菌の可能性を考慮すると抗菌薬前房内投与に加え、timely iodine法を使用するのが妥当と思われ、多施設の結果を用いての検証を予定している。 さらに感染が疑われて手術や抗菌薬投与加療が行われた症例を対象に、前房内の細菌量の評価を行った。術後眼内炎の場合、抗菌薬投与後のことが多く、起因菌が培養で同定されないことも多い。このため16S r-RNA PCRを用いて評価する手法を確立した。一方、正常者においても16S r-RNAは微量であるが検出される。このため、適切なカットオフ値や、眼内炎として判定される菌量レベル、さらには徹底的な抗菌薬の投与が必要なレベルの確立に向けて検証をすすめつつある。これにより眼内炎疑い例を含め、より適切なマネージメントの確立につながると考えている。
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