研究課題
前年度までの成果から、リパスジルが血管内皮細胞において、炎症性サイトカイン刺激によるアクチン重合を阻害することによりclaudin-5の消失を抑制することがわかったが、タンパク質の発現量は分解のみならず産生(転写・翻訳)によっても調節を受ける。そこでVEGF刺激下および炎症性サイトカイン刺激下での血管内皮細胞におけるclaudin-5 mRNA量を定量したところ、低下したclaudin-5の転写量がリパスジルによって回復することがわかった。つまり、リパスジルはclaudin-5の分解を抑制するだけでなく、産生をも促進することで、血液網膜関門機能を維持することが示唆された。次にROCKとclaudin-5転写機構の関連について検証を行った。定常状態においては、転写因子βカテニンは血管内皮細胞間接着構造構成分子であるVE-cadherinと結合し細胞膜直下に存在するが、VEGFおよび炎症性サイトカイン刺激によりVE-cadherinとβカテニンの結合が外れるとβカテニンが血管内皮細胞核内へ移行し、claudin-5のプロモーター領域に結合することで転写をoffにする。リパスジルによって細胞骨格が安定化し、VE-cadherinの細胞膜上への発現が維持されることで、βカテニンが細胞質に保持され、claudin-5の転写阻害が抑止されることを明らかにした。また、ROCKには2つのアイソフォーム、ROCK1とROCK2が存在する。リパスジルはどちらのアイソフォームの活性化も阻害するため、どちらのアイソフォームが病態に関与するのか検証する目的で、CRISPR/Cas9によりROCK1 KO血管内皮細胞、ROCK2 KO血管内皮細胞を作成した。結果、ROCK2がclaudin-5の発現機構に関与していることが明らかとなった。
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Sci Rep
巻: 11 ページ: 4185
10.1038/s41598-021-83334-6