研究課題/領域番号 |
19K18855
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林 勇海 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00837445)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エクソソーム / 移植片対宿主病 / 自己免疫疾患 / マイボーム腺機能不全 / 血管内皮 |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患および移植片対宿主病(GVHD)によるドライアイ症例には高度なマイボーム腺機能不全や眼瞼の血管走行異常を伴う場合が高頻度に認められる。近年、本疾患における眼表面の血管異常の病態形成に関わるものとしてエクソソームが注目されているが、免疫担当細胞と血管内皮との相互作用におけるエクソソームの関わりを調べた報告はなく、この点に注目して病態解明へのアプロ―チを試みた。 基礎研究では骨髄移植後4週時に眼瞼、結膜、涙腺組織を採取し、病理組織学的検討、透過型電子顕微鏡による超微形態の検討、走査型電子顕微鏡を用いた眼表面の微絨毛の検討、血清学的変化を免疫担当細胞と血管系の相互作用、病的変化について検討した。予備実験で、GVHDモデルマウスの眼瞼には対照群に比してVEGFRの高度な発現が認められた。 またエクソソームマーカーの1つであるCD63抗体を用いてGVHDモデルマウスおよび対照群の眼瞼組織切片の免疫染色を施行、共焦点顕微鏡による蛍光撮影をおこなった。GVHDモデルマウスの眼瞼組織切片では対照群と比較し有意にCD63発現が増加しており、主に脈管構造の内部に発現がみられたことから、血管内皮から分泌されたエクソソームが病態に関与している可能性が考えられた。 次に、自己免疫疾患の病態に応じて関連するエクソソームの性状が異なる可能性を考え、ヒトGVHD症例およびその他の自己免疫疾患の一つであるシェーグレン症候群症例の凍結保存血清を用いて専用キットによるエクソソームの抽出を施行、その濃度とサイズの解析結果を比較検討した。両症例間ではエクソソームのサイズ分布や濃度に差がみられ病態の違いに関係している可能性が考えられたが、今後症例数を増やした比較が必要と考えられる。 造血幹細胞移植後のGVHDモデルマウスにおける眼表面の血管異常とマイボーム腺異常について検討した論文の準備、執筆を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度より研究の拠点と異なる大学病院へ急遽異動となり、研究を行える時間が限られていた。また、エクソソーム抽出キットやエクソソーム関連抗体などの購入など、実験の準備段階に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫疾患の病態に応じた関連するエクソソームの性状の差異を比較検討することを目標とする。ヒトGVHD症例およびシェーグレン症候群などその他の自己免疫疾患の症例に対して倫理委員会承認課題プロトコールを遵守しつつ、外来にて十分なインフォームド・コンセントを行ったうえでドライアイやマイボーム腺機能不全の臨床的評価および血清採取を行う。購入予定の専用キットを用いて血清からエクソソームを抽出し、両群間におけるエクソソームのサイズ分布や濃度の解析を行い、病態や重症度に応じてこれらに違いがみられるかを比較検討する。 基礎研究としてGVHDマウスモデルを用いて、眼瞼、涙腺、結膜の毛細血管の病態変化を移植前、初期病変から経時的に検証し、GVHDにおける血管内皮の異常に至る病態機序と分子基盤を解明する。一部に骨髄移植のドナーマウスにGFPマウスを用いて、ドナー細胞の血管内皮への生着率を検討し、病的血管とコントロールの血管内皮の間にドナー細胞の生着率の違いの有無を検討する。 今年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で一定の行動制限が予想されるが、オンライン会議などで研究室と密に連携をとりながら可能な範囲で実験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
エクソソーム抽出機器およびキット(約50万円)の購入を予定し、次年度使用額が生じた。2020年度前半に同キットを購入予定である。
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