研究課題
自己免疫疾患および慢性移植片対宿主病(cGVHD : chronic graft-versus-host disease)の症例には高度なマイボーム腺機能不全が高頻度に合併し、眼瞼の血管走行異常を伴う場合が多く認められる。本研究ではcGVHDの病態における血管の果たす役割について着目した。自己免疫疾患およびcGVHDにおける眼瞼の血管には多彩な形態異常があり、これらの病的変化により高度なマイボーム腺機能不全およびドライアイをきたすものと考えられた。また、これまでにcGVHDに関連した眼表面の線維化には血液由来fibrocyteの関与があることを見出している(Ogawa Y, eLife 2016)。fibrocyteはエクソソーム分泌により血管新生を促進することから、この血液由来fibrocyteの放出するエクソソームが病態形成に重要な役割を果たす可能性を着想した。本研究期間では、cGVHDモデルマウスにおける血管やマイボーム腺の病理組織学的検討を行い、血管拡張、蛇行、増生のような形態異常を見出し、学術研究雑誌 The Ocular Surfaceに研究成果を報告した(Yang F, Hayashi I, et al. Ocul Surf. 2022)。またcGVHDモデルマウスの涙腺組織切片においてエクソソームの表面マーカーとなる抗体を用いた免疫染色を行い、血管内皮などへの発現が示唆された。最終年度ではcGVHDモデルマウス18匹の血清から専用器機を用いてエクソソームを抽出、そのサイズや濃度についてコントロール群と比較検討し、cGVHD群ではエクソソームの平均粒子径が有意に大きいことを見出した。以上の成果をもとに本疾患の新たな治療標的を探索中である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
The Ocular Surface
巻: 26 ページ: 328~341
10.1016/j.jtos.2021.10.006