近年、iPS細胞、間葉系幹細胞など多数の再生医療製品が開発され、今後の発展が著しく期待されている。しかしながらそれらの細胞加工製品の中間製品あるいは最終製品となる細胞には目的細胞やその他の目的外細胞ないしその前駆細胞あるいはもとの未分化細胞が混在している可能性を排除できない。特にヒトiPS細胞やES細胞は奇形腫形成能による造腫瘍性を基の特性として保持していることから、これらの混在量を腫瘍形成のある目的外細胞の混在量とともに品質特性を評価し明らかにすることが重要である。しかしながら従来のin vivo造腫瘍試験モデルにおいては主に免疫不全動物の背部皮下・腎被膜下・精巣などで行われ肉眼による腫瘍形成を判定するまでに数か月を要し時間と費用がかかることが問題になっている。 そこで申請者らの研究グループでは視認性に優れ、免疫寛容部位である前眼部を用い簡便で短期で低コストに評価可能な造腫瘍性試験評価系を構築し、知財を申請している。本年度は第一にiPS細胞(臨床応用研究細胞株のFFI1-4株およびHLAホモ接合型iPS細胞株であるFf-MH09s01株)について検討を行い奇形腫形成能における株間差についての知見を得た。第二に、「ヒト細胞加工製品の未分化多能性幹細胞・形質転換細胞検出試験、造腫瘍性試験;遺伝的安定性評価に関する留意点」のパブリックコメント案に準じて、陰性対象となるヒト二倍体細胞(線維芽細胞)にスパイクした陽性対照(Hela細胞)を設定し、そのさまざまな条件下でspikeを行いそれぞれにおける造腫瘍性を確認し、最低腫瘍形成用量(TPDmin)を確認することができた。
|