近年、iPS細胞、間葉系幹細胞など多数の再生医療製品が開発され、今後の発展が著しく期待されている。しかしながらそれらの細胞加工製品の中間製品あるいは最終製品となる細胞には目的細胞やその他の目的外細胞ないしその前駆細胞あるいはもとの未分化細胞が混在している可能性を排除できない。特にヒトiPS細胞やES細胞は奇形腫形成能による造腫瘍性を基の特性として保持していることから、これらの混在量を腫瘍形成のある目的外細胞の混在量とともに品質特性を評価し明らかにすることが重要である。しかしながら従来のin vivo造腫瘍試験モデルにおいては主に免疫不全動物の背部皮下・腎被膜下・精巣などで行われ肉眼による腫瘍形成を判定するまでに数か月を要し時間と費用がかかることが問題になっている。そこで申請者らの研究グループでは視認性に優れ、免疫寛容部位である前眼部を用い簡便で短期で低コストに評価可能な造腫瘍性試験評価系を開発し、知財を申請している。これは我々の眼科学教室で特許出願した方法であり(短期間造腫瘍性スクリーニングシステム、出願人 学校法人慶應義塾)、眼内に造腫瘍細胞を注入することで、形成された腫瘍を角膜の透明性を利用して直接観察が可能である。本年度は前年度得られたTPD50の解析結果を基に、免疫不全動物を用いて、前眼部造腫瘍性試験モデルとしての妥当性について検討を行うことができた。本検出系はヒト二倍体線維芽細胞に目的細をSpikeすることで感度を高くすることを可能にした。特にヒト線維芽細胞に代表的な腫瘍細胞株であるHela細胞をSpikeした検討ではTPD50は91.3と良好な数値を得た。 さらに今後の波及効果として、前眼部に腫瘍細胞株を移植し、体外から腫瘍抑制剤の候補を投与しその抗腫瘍内活性と腫瘍内への免疫細胞の浸潤の評価に用いるなどの臨床応用をめざす新しい知見も得ることができ非常に有意義であった。
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