本研究にてまずはPPARα以外のPPARβ/δ、PPARγといったアゴニストにおいても同様に点眼剤化を行い、アルカリ 外傷モデルで創傷治癒への影響を評価した。我々の研究結果ではPPARβ/δアゴニスト点眼剤は炎症を 抑制する一方、血管新生は促進させた。正常角膜へPPARβ/δアゴニスト点眼を投与した場合には血管 新生は生じなかったため、炎症を起点とした血管新生促進作用があると考えられる。分子生物学的精査ではPPARβ/δアゴニスト点眼はKi67を発現亢進させ、細胞の分裂能を活性化することがわかった。 PPARγアゴニスト点眼剤は特に抗炎症的に働き、マクロファージの分化に関与し抗炎症的に働くM2マクロファージの分化を促し、角膜創傷治癒に寄与した。興味深いことにこれらのPPARの役割の違いは合剤として使用することで作用が増強し、PPARαアゴニストとPPARγアゴニストの合剤は単剤と比較して、より線維化を抑制していた。このように抗炎症、抗血管新生、抗線維化作用を持つ各PPARおよびPPAR合剤は血管新生緑内障や糖尿病網膜症、瘢痕性角膜疾患などの難治性眼疾患における新たな治療 戦略の候補となる可能性があり、今後も研究を進めていく。
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