研究課題/領域番号 |
19K18864
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小出 直史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (40714126)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再生医療 / 網膜色素上皮 / 移植剤型 / 品質管理 |
研究実績の概要 |
細胞選別技術の開発:これまで実施された臨床研究等において移植用網膜色素上皮細胞懸濁液は調製(継代操作を伴わない2週間の維持培養)後に培養容器から細胞を酵素処理を介して回収され、トリパンブルー染色による生存率を記録して出荷される。はじめに、細胞回収後のトリパンブルー染色およびAnnexinVによる早期アポトーシスシグナルの入力要否を基礎データとして取得した。その後、イメージングセルソーターによる非染色の細胞選別の予備検討を実施した。予備検討の結果、AnnexinV染色およびPI染色による教師データを用いて試行回数を重ねていくことで選別精度をあげられることを示唆する結果を得られた。今後は選別精度を品質管理として応用できる水準を目指す。また、移植直前に細胞選別を実施するためには、オペ室で操作する簡易な機器にする必要がある。この点については、原理検証とは個別に機器メーカーと実現に向けた相談を進めている。 最適製剤化技術と臨床手術対応表策定:これまでに実施された、自家シート移植1例および他家懸濁液移植5例を振り返り課題と優位性について臨床医を交えた議論を重ねた。並行して免疫原性に関するケアも他家移植5例の移植後3年の臨床成績を慎重に考察した。現時点で、網膜色素上皮製剤は滲出型加齢黄斑変性に限る必要はなく網膜色素上皮が機能不全あるいは欠損することによる臨床的不利と判断される疾患へ広く用いるよう臨床研究のデザインを議論している。具体的には、RPE65等のの酵素をはじめとする物質補填で疾患改善が期待されるものと構造的な改善(面積を含む)まで要求される疾患に切り分けて段階的なマイルストーンを設定すべく剤型および臨床的な有効性評価を含む対応表案を策定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞選別技術の開発:細胞の生存に関する非染色判定に関しては原理検証が順調に進んでいる。網膜細胞の機能を反映するマーカー探索については、立体網膜を対象とする場合に出荷時期(立体網膜の発生・分化の程度)が臨床的にいくつか候補がある状況でマーカー探索の選択肢が多くなっている状況があり、移植細胞のスペック決定と並行して臨床医および有識者と議論を重ねていく予定である。 最適製剤化技術と臨床手術対応表策定:対象疾患の選定、および剤型に関する整理は臨床医および細胞製造スタッフと順調に進められている。一方で移植機器改良を含む剤型の改良に関しては機器の施策や動物実験のスケールの課題を考えながら進めている。現時点で大幅な遅れはないものの引き続き多角的な議論と考察を継続させる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞選別技術の開発:細胞回収後の、AnnexinV染色およびPI染色による教師データを用いて試行回数を重ねていくことで、非染色による選別精度を品質管理として応用できる水準を目指す。また、機器開発に関する議論は機器メーカーとの議論を進め、機器の利用範囲が広範に展開できるように原理検証に幅を持たせることを検討する。また、網膜細胞の機能を非染色で評価するために、網膜細胞の機能を反映するマーカー(表面抗原および機能性タンパク等)について候補の絞り込みを実施する。その後は細胞死と同様にイメージングセルソーターの教師および比較基礎データとして利用する。 最適製剤化技術と臨床手術対応表策定:製剤化技術の向上のために、他課題とも連携して移植デバイスの改良を含む動物を用いた評価を計画する。評価対象としてサルをたくさん使用することは難しい側面が大きいためin vitroや小型動物で可能な限り予備評価ができるとうに実験計画を工夫することとする。また、臨床研究の実施計画作成に向けて対象疾患の選定と評価基準策定について、臨床医や統計家を含む多角的な意見を取り入れ実現に向けた効率的なオペレーションを図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度と同様に、細胞選別技術開発の項目について、1)サンプルとなる細胞調製、2)生存率等の評価に関する消耗品費用、3)機器改良に関する試作や検討に係る費用が発生する。さらなる検証が必要なため上記が継続して必要となる。
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