本研究では、細胞/組織を用いた再生医療を広く実現するための検討として、1:細胞製造の角度向上、2:移植対象(被験者の疾患環境等)の再考、を掲げている。1について、網膜色素上皮や網膜シートを対象に移植用細胞の製造効率化を目指した検証を重ねてきた。本年度は昨年度まで実施したイメージングサイトメーターを用いた細胞判定に関する再現性確認を実施した。具体的には、膜前駆細胞マーカーであるRX遺伝子の下流に蛍光タンパクVenus遺伝子がノックインされたES細胞から分化誘導した網膜オルガノイドを用いて、イメージングサイトメーターに搭載されている画像判定用のAIに対して、 網膜オルガノイドを分散し、Venusタンパク質の蛍光を指標にした網膜前駆細胞(Venus陽性細胞)とその他の細胞(Venus陰性細胞)の判別を再検証した。その後、事前情報無しに分散したオルガノイドを用いて、Venusシグナルをもとに正誤判定を再検証した。機械学習を経て生成されたアルゴリズムは精度良く網膜前駆細胞(Venus陽性)を判別できることが確認された。今後は系の安定性を向上されることと、純度の検証などを詰めていく必要があり、前後の製造工程との融和をデザインしていく必要があると考えられる。2については、治療戦略に関する議論を術後経過やこれまでの手術記録などを振り返りながら専門医と議論を重ねた。経過観察中の臨床研究等の情報を積極的に共有し議論の機会を設けていくことが肝要である。
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