研究課題/領域番号 |
19K18866
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
下内 昭人 旭川医科大学, 大学病院, 診療助教 (60647692)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 網膜内細小血管異常 / 光干渉断層血管撮影 / 汎網膜光凝固術 |
研究実績の概要 |
本研究は糖尿病網膜症の重症化の指標となる網膜内細小血管異常(IRMA)に着目し、光干渉断層血管撮影(OCTA)を始めとする多面的な網膜循環解析により、IRMAの発生機序および病態を解明し、糖尿病網膜症の早期介入を可能とする新たな進行予測法および早期治療法の基盤構築を目的とする。 2019年度はOCTAを用いた臨床研究を行った。具体的には、国際重症度分類で重症非増殖糖尿病網膜症(SNPDR)および増殖糖尿病網膜症(PDR)の患者29名46眼を対象に、汎網膜光凝固術(PRP)前後でのIRMAの形態を経時的に観察した。IRMAはその形態変化の状態から5つのサブタイプ(unchanged type、tuft-regression type、reperfusion type、mixed type、worsening type)に分けた。その結果、新生血管は全例退縮していたのに対し、IRMAには変化しないタイプや再灌流を認めたものがあり、これらのタイプのIRMAはリモデリングの要素があることが示唆された。また、再灌流には、正常血管によるものと異常血管によるものがあることが分かった。一方、PRP前にtuft(房状の新生血管の芽)を有するIRMAが、SNPDRと比較してPDRで有意に多く認められ、一部のIRMAは新生血管へ進展しつつあるものも認めた。これらのことから、tuftを伴うIRMAには新生血管の要素を持っていることが示唆された。これらの研究結果はIOVS 2020;61(3):34に掲載された。 in vivo実験の準備として、新たな動物実験施設の建設が完成しており、今後進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、光干渉断層血管撮影を用いて糖尿病網膜症における汎網膜光凝固術前後での網膜内細小血管異常の形態変化を観察することにより、網膜内細小血管異常の病態の一部分を新たに解明することができた。光干渉断層血管撮影やドップラー光干渉断層血流計は日常診療ですでに使用されており、確立している。また、in vivo実験に必要な動物実験施設が新たに建設され、今後動物実験を進める準備が進められている。これらのことから、本研究課題の進捗状況は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は臨床研究として、引き続き網膜内細小血管異常(IRMA)の病態を解明するため、光干渉断層血管撮影とドップラー光干渉断層血流計を用いて、IRMAの形成過程や新生血管へ進展する条件について検討していく。さらに、動物実験施設が完成したため、in vivo実験の準備を進め、糖尿病モデル豚を用いて、IRMAの形成過程の経時的変化、酸素飽和度との関連性、免疫組織学的検討などをしていく予定である。入手可能な糖尿病モデル豚は数が限られるため、必要に応じて、糖尿病モデルマウスやラットなど、使用する実験動物の対象を拡大することで補完することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文校正費および投稿費は2020年度に使用する予定だったが、研究の進行が順調であり、論文投稿することができたため、前倒し請求した。しかし、論文投稿費については2020年度にずれこんだため、次年度へ繰越となった。
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