研究課題/領域番号 |
19K18867
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
宋 勇錫 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (00726341)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドップラ光干渉断層計 / 網膜血流 / 網膜血流波形解析 / 緑内障 |
研究実績の概要 |
緑内障眼において網膜血流測定を行い、そこから得られた網膜血流量の絶対値を解析することで緑内障の診断能をあげることを明らかにした(Glaucoma Diagnostic Performance of Retinal Blood Flow Measurement with Doppler Optical Coherence Tomography. Trans Vis Sci Tech2022)。具体的には半視野障害(上半視野か下半視野のどちらかが緑内障性の視野障害をきたしている眼。他方の半球は視野障害がでていない)を有する緑内障眼で網膜血流量を測定し、僚眼の網膜血流量と比較すると、緑内障眼では網膜血流量が低下していることをあきらかにした。さらに、従来の緑内障診断に使用する、網膜神経繊維層厚(光干渉断層計:Optical Coherence Tomographyで測定したもの)を用いた緑内障の診断能と今回我々が得た網膜血流量を用いた診断能をAUCを用いて比較すると、従来のものよりも網膜血流量を用いたものは診断能が低いものの、従来の網膜神経繊維層厚と網膜血流量の両方のパラメータを合わせることにより診断能がそれら一つから得られたものよりも改善することが明らかとなった。さらに本研究において、半視野障害のある眼での網膜血流測定の結果から、視野障害のない半球においてもすでに網膜血流量は減少していることが明らかとなった。これは、緑内障において、視野障害という自覚障害が生じる以前に機能(血流量)が低下していることを示しており、今後、緑内障の早期発見に役立つ可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染の影響によりブタを用いた動物実験を行うことが困難となったため、基礎研究から臨床研究へと比重を移した。そのため、基礎研究のデータ取得が遅れている一方で、臨床研究は計画以上に進行している。今後は動物実験の開始を待って、基礎研究データの取得を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記であげたように、これまで、網膜血流測定を行うことで緑内障の早期発見が可能であることを示した(Glaucoma Diagnostic Performance of Retinal Blood Flow Measurement with Doppler Optical Coherence Tomography. Trans Vis Sci Tech2022)。また2021年に我々は、網膜血流の新たなパラメータである網膜血流の速度波形を取得することで、全身の動脈硬化の度合いを間接的に把握することができる可能性を示した(Retinal Blood Velocity Waveform Characteristics With Aging and Arterial Stiffening in Hypertensive and Normotensive Subjects. Trans Vis Sci Tech2021)。そこで今後は、緑内障診断(特に早期緑内障)に網膜血流速度波形解析のパラメータを加えることで、どの程度診断能が上昇するか検討する予定である。尚、同時にブタを用いた網膜血流測定実験系も立ち上げることで、臨床データだけでなく、基礎研究データを取得し、臨床データの裏付けを行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により基礎研究が計画どおり進まなかったため、次年度の使用額が生じた。次年度においては、その繰越した研究費を用いて、基礎研究(ブタを用いた網膜血流測定実験)を開始する予定である。
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