今年度は、昨年度のNF-kB活性を抑制する化合物スクリーニングにより選別したヒット化合物に対し、網膜疾患の炎症起点となるマイクログリアへの影響を評価した。マウスマイクログリア細胞株であるBV2細胞に対しLPS刺激したところ炎症性サイトカインのmRNA発現増加がみられたが、ヒット化合物のうちcompound #38が最も炎症性サイトカインの産生を抑制することを確認した。スクリーニングで用いたレポーターアッセイに加え、NF-kBのリン酸化ならびに核移行を免疫染色とウェスタンブロッティングで評価したところ、LPS刺激後のBV2細胞では細胞内NF-kBのリン酸化が亢進し、NF-kBの核内移行が誘導されることが確認された。これらの現象はLPS添加前にcompound #38を処理することで顕著に抑制された。このcompound #38はジヒドロピリジン骨格を持ち、L-typeカルシウムチャネルブロッカーであることが推測されたため、LPS刺激後の細胞内カルシウム流入を測定した。LPS刺激後のBV2細胞内カルシウム量は有意に増加したが、compound #38を前処理した群においては細胞内カルシウム流入が有意に抑制された。本化合物は抗炎症作用をもつ至適濃度においてBV2細胞に対し細胞毒性ならびに増殖活性を認めないことも明らかにした。今後、共培養や動物試験において本化合物の神経保護作用ならびに緑内障治療薬としての可能性を検証する予定である。
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