研究課題/領域番号 |
19K18870
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
冨樫 敬太 山形大学, 医学部, 医員 (80810796)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 網膜芽細胞腫 / CEP-1347 / 細胞増殖抑制能 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで「癌の治療薬としてのドラッグリポジッショニング」をテーマに既存の薬剤を癌の治療薬に再利用可能ではないか研究してきた。これまでに、研究代表者は、パーキンソン病やHIV脳症の新規治療薬として開発された薬剤であるCEP-1347がグリオーマや膵癌・卵巣癌などのがん幹細胞に対して抗腫瘍効果を示すことを明らかにしてきた。一方、網膜芽細胞腫の代表的な細胞株であるY79は神経幹細胞マーカーや胚性幹細胞マーカーが発現していることが知られており幹細胞様の性質をもつことが推察され、CEP-1347が網膜芽細胞腫に有用な薬剤ではないか、と着想した。予備実験でCEP-1347はY79に対して細胞増殖抑制能をもつ傾向が認められたたため、Y79を含めた6種の網膜芽細胞腫細胞株においてCEP-1347が細胞増殖抑制能をもつか、また、増殖抑制能をもつとすればどのような機序で作用するかをを検討するために本研究に着手した。 6種類の網膜芽細胞腫細胞株を用いて検討したところ、5種類の細胞株においてCEP-1347による細胞増殖抑制を認め、この時p53経路が活性化していることがわかった、さらに、CEP-1347の感受性の高い細胞株ではp53の抑制因子の1つであるMDM4(Murine double minute 4)タンパク発現レベルが高く、CEP-1347処理によって誘導されるMDM4減少とp53上昇が相関していることを示した。現在、網膜芽細胞腫の診療において有効な分子標的薬治療は確立されていない。網膜芽細胞腫はRb遺伝子のみならずいくつかの遺伝子異常があり、MDM4はそういった網膜芽細胞腫で異常の見られる遺伝子の1つである。今後CEP-1347は網膜芽細胞腫の中のMDM4タンパクが発現している症例に有効な分子標的薬となりうることが期待される結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
6種類の網膜芽細胞腫細胞株を用いて検討したところ、5種類の細胞株においてCEP-1347による細胞増殖抑制を認め、この時p53経路が活性化していることがわかった、さらに、CEP-1347の感受性の高い細胞株ではp53の抑制因子の1つであるMDM4(Murine double minute 4)タンパク発現レベルが高く、CEP-1347処理によって誘導されるMDM4減少とp53上昇が相関していることを示した。網膜芽細胞腫はRb遺伝子のみならずいくつかの遺伝子異常があり、MDM4はそういった網膜芽細胞腫で異常の見られる遺伝子の1つである。現在、網膜芽細胞腫の診療において有効な分子標的薬治療は確立されていない。今後CEP-1347は網膜芽細胞腫の中のMDM4タンパクが発現している症例に有効な分子標的薬となりうることが期待される結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
CEP-1347の網膜芽細胞腫に対する増殖抑制効果の有無ならびにMDM4遺伝子発現との関連をin vitroにおいて検討する。(=機序の探求) さらにin virtoで増殖抑制効果が確認された細胞株についてはマウスを用いた網膜芽細胞腫細胞株の移植実験を行い、CEP-1347投与によって腫瘍形成能が低下するかどうかを確かめるためのin vivo実験も検討したい。(=プレクリニカルスタディ)
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次年度使用額が生じた理由 |
CEP-1347の網膜芽細胞腫に対する増殖抑制効果の有無ならびにMDM4遺伝子発現との関連をin vitroにおいて検討する必要があったため。(=機序の探求) さらにin virtoで増殖抑制効果が確認された細胞株についてはマウスを用いた網膜芽細胞腫細胞株の移植実験を行い、CEP-1347投与によって腫瘍形成能が低下するかどうかを確かめるためのin vivo実験も予定したため。(=プレクリニカルスタディ)
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