昨年度の研究成果から、未熟児網膜症モデルマウスに対して抗VEGF薬のひとつであるアフリベルセプトを眼内注射すると、注射眼だけでなく反対眼への薬効も認め、短期間ではあるが体重成長も障害する結果が得られたため、アフリベルセプトの眼内注射は短期間の全身性の副作用を有する可能性が示唆された。 そこで本年度は、アフリベルセプト眼内注射による眼以外の臓器への影響を検討するために、未熟児網膜症モデルマウスの片眼にアフリベルセプト、もしくはPBSを眼内注射した後の腎血管、脳血管の変化を観察した。その結果、腎臓においてはアフリベルセプト注射群において有意な血管内皮細胞の減少を認めたが、脳血管においては変化を認めなかった。このことから、アフリベルセプト眼内注射による全身への影響は臓器によって程度が異なることがわかった。 続いて、臓器によってアフリベルセプトの影響が異なる原因を検討するため、アフリベルセプト眼内注射後の注射眼、反対眼、腎臓、脳におけるアフリベルセプトの局在を観察した。その結果、影響を認めた注射眼、反対眼、腎臓においては血管外にもアフリベルセプトが観察されたのに対して、影響を認めなかった脳においては血管内にのみアフリベルセプトが観察された。 以上の結果から、未熟児網膜症モデルマウスにアフリベルセプトを眼内投与すると短期間ではあるが全身性の副作用を有すること、全身性副作用の程度は臓器によって異なること、さらに、影響の程度が異なる原因はアフリベルセプトの局在が関与している可能性があることが明らかとなった。これらの結果は、ヒトの未熟児の診療において抗VEGF薬眼内注射を使用する際に非常に有用な知見をもたらすものである。
|