網膜ジストロフィは重篤な視力障害を来す眼疾患であり、現在有効な治療法はない。その一型であるレーバー先天黒内障16型(Leber’s congenital amaurosis type16 以下LCA-16)ではイオンチャネルKir7.1をコードするKCNJ13遺伝子に異常があり、KCNJ13遺伝子は眼の網膜色素上皮(以下RPE)細胞に多く発現していることが知られている。しかしKCNJ13遺伝子がRPEや網膜を含む眼球全体に及ぼす影響には不明な点が多い。そこで本研究ではゲノム編集技術を用いてLCA-16の病態を明らかにし、治療法開発の基盤となる研究を行う。 今年度は昨年度に引き続き、作製したKCNJ13遺伝子欠損RPE(以下、KCNJ13 KO iPS-RPE)の形態学的な変化に着目し、解析を行った。野生型iPS-RPEおよびKCNJ13 KO iPS-RPEをトランスウェル上に播種して4週の時点で走査型電子顕微鏡(以下、SEM)で細胞表面の形状観察を行った。前年度の免疫染色を行った細胞での3次元解析で明らかになった、一部のRPEがシート状に配列したRPEから隆起した形状を示す所見がSEMにおいても再現性をもって確認された。また、野生型iPS-RPEでは頂端側のRPEは細胞表面に発達した微絨毛を認めたが、KCNJ13 KO iPS-RPEのうち突出した形態を示す部位には微絨毛の発達が見られない、もしくは未熟な細胞が一に存在した。また、KCNJ13 KO iPS-RPEでは一部の細胞で細胞間接着に異常を生じている細胞を認めた。詳細な機序に関しては不明な部分があるが、KCNJ13遺伝子欠損によってRPEの形態に異常が生じ、そのことがLCA-16の病態に関与している可能性が示唆された。
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