マウス胚線維芽細胞を2ng/ml TGF-βで刺激し筋線維芽細胞への分化を促すと、小胞体ストレスマーカーであるBiPやspliced XBP-1の遺伝子発現が誘導されることから、小胞体ストレスが起きていることが示唆された。また、小胞体ストレス応答経路の主要な3つのセンサータンパクであるPERK、IRE1、ATF6それぞれをノックアウト、またはノックダウンしたマウス胚線維芽細胞をTGF-βで刺激し、それぞれの筋線維芽細胞への分化をα-smooth muscle actinの遺伝子発現で評価すると、PERKをノックアウトしたマウス胚線維芽細胞においては発現が抑制された。以上のことから線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化には小胞体ストレス応答経路の内、主にPERK経路が関わっていることが示唆された。並行して、野生型マウスの角膜を採取し、disc上で培養することでマウスの角膜実質細胞を分離培養する手技を確立した。また、ヒト強角膜片から角膜実質を切り出し、dish上で培養することで角膜実質から線維芽細胞を初代培養することに成功した。初代培養したヒト角膜実質細胞を様々な条件の器質上で培養するため、ヒト角膜の硬さを模した25kPa(正常角膜)と75kPa(線維化した角膜)のハイドロゲルを作成する手技を確立した。また、細胞培養可能になるようハイドロゲルの細胞毒性を無くす最適な洗浄法を決定した。その後、新型コロナウイルス感染症流行のため研究は中断していた。この度、研究代表者の異動により研究継続ができなくなったため廃止申請を行った。
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