臨床研究に関しては、60名70眼に対して治療及び研究を行うことができた。微小血管瘤へのナビゲーションレーザー、びまん性網膜浮腫への閾値下レー ザーを行い、改善に乏しい症例では薬物療法を併用した。視力、フルオレセイン蛍光眼底造影、眼底自発蛍光、OCT、OCT血管撮影、微小視野計を用いて治療前後の評価を行った。術前の網膜浮腫の程度が閾値下レーザー治療の効果に影響を与えており、浮腫が強い症例は閾値下レーザー への反応が悪い例が多く、術前の薬物療法や微小血管瘤へのナビゲーションレーザーの併用が有効と考えられた。安全性については、特に眼底自発蛍光においてこれまで報告されてこなかった様々な反応が見られた。他の検査と合わせてその意義を検討し、少なくとも研究期間中にはおいていずれも細胞傷害に伴うものではないであろうと考えられた。同様に微小視野計の網膜感度に関しても閾値下レーザーによる低下は認めず、むしろ改善する場合もあった。また、これまでの報告と同様に浮腫の改善と視力の改善が必ずしも相関しないことが多かった。研究後期の治療効果は既報よりも有効性が高く今回の研究の有用性が示唆された。臨床的には薬物療法と併用での至適レーザー条件は概ね確認できてきており今後論文として報告したいと考えている。 基礎実験に関しては、C57BL/6マウスへの閾値下レーザーを予定していたが、マウス網膜へのナビゲーションレーザーのトラッキングで難渋し実施困難であった。動物実験を行うことによってレーザー安全域の上限を検討することが困難となったため、生物学的な影響をサイトカイン測定により検討することとした。サイトカインの変化からはいくつかの知見が得られた。今後臨床研究と合わせて評価していくことでさらに効率性を高めていく。
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