研究実績の概要 |
本年はIn vivo実験の2)S1PR3欠失マウスを用いた角膜電熱凝固モデル実験、in vitro実験の1),2)HUVECを用いた管腔形成実験,3)眼線維芽細胞を用いた実験を行った。in vivo2)については野生型マウスに比べてS1P3ノックアウトマウスにおいて角膜新生血管は有意に抑制されていた。また角膜で発現している各種マーカーについてはVEGF-A,αSMAがS1P3ノックアウトマウスで抑制されていた。角膜免疫染色切片を作成しVEGF-Aは角膜上皮に発現しており、S1P3ノックアウトマウスで発現は少ないように観察できた。αSMAは角膜実質に広範囲に発現しており、S1P3ノックアウトマウスで発現量が少ないように観察できた。in vitro1),2)についてはHUVECを用いた実験ではHRMECより細胞が弱いため管腔構造がはっきり発現しなかったため定量的評価が行えなかった。代替評価としてHRMEC,HUVECに S1P,S1PR3阻害剤を付加しVEGF-A発現量を確認すると両血管内皮細胞でS1PR3依存のVEGF-A発現を認めた。in vitro3)については眼線維芽細胞と角膜上皮細胞にTGFβ1,Smad3阻害剤を付加しSphingosine kinase1の発現を比較する系で、Sphingosine kinase1は線維芽細胞においてTGFβ1-Smad3経路を通じて発現していた。また眼線維芽細胞と角膜上皮細胞にS1PとS1P3阻害剤を付加しVEGF-A発現を比較する系では、VEGF-Aは角膜上皮細胞においてS1P3を介して発現していた。これは in vivoで角膜上皮に特異的にVEGF-aが発現していたことと矛盾しなかった。つまり角膜に対するTGFβ刺激は線維芽細胞でSphingosine kinase1を発現し、上皮細胞でVEGF-Aを産生していると結論づけた。
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