研究実績の概要 |
S1PR3ノックアウトマウスでは野生型と比較して角膜熱凝固によって誘発される角膜血管新生は抑制され、角膜内のVEGF-AとaSMAのmRNA発現レべルが低下していた。in vitroでの検討では マウス角膜上皮/線維芽細胞を用いた実験では、角膜刺激によって誘発されるTGFb1は角膜実質内でSPK1活性化を介してS1P産生を増加させた。実質内で産生されたS1Pは場所を変えて、角膜上皮細胞内でVEGF-A産生を促進した。 ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いた実験では、S1PR3は血管内皮細胞に発現していることを確認した。S1Pを付加することでVEGF-A mRNA発現レベルを上昇させた。管腔構造構築実験を行うと管腔構造はS1Pで拡大し、S1PR3阻害剤で縮小した。このことからS1PはS1PR3を介して血管内皮細胞の管腔構造に関与していることが言える。 以上のことをまとめS1P-S1PR3を介したシグナル経路が角膜血管新生に関与していることをlaboratory Investigation2021に掲載された。 ついでS1PR3の角膜瘢痕混濁へ影響を検討するためにマウス角膜アルカリモデルを作成した。このモデルではマウス角膜に1規定のNaOHを点眼し10日後のマウスの角膜をパラフィンブロック超薄切片での組織学的評価を行った。結果としてS1PR3ノックアウトマウスではアルカリ外傷10日後の角膜断面面積は統計学的優位に小さかった。その原因を解明しS1PR3の角膜実質瘢痕に対する役割を解明するためアルカリモデル7日目のWT, S1PR3 KOの2角膜1サンプルとしてRT-PCRを施行した。 結果としてアルカリモデル7日目のRT-PCRではF4/80,aSMA,TGFb1,IL-6,MCP-1では差がなかった。瘢痕混濁ではaSMAの関与が最も一般的であり今後他の因子の関与を検討している。
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