研究課題/領域番号 |
19K18891
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
浅田 洋輔 順天堂大学, 医学部, 助教 (70596626)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アレルギー性結膜炎 / 自然免疫 / IL-25 / ILC2 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はアレルギー性角結膜炎における慢性化および重症化におけるIL-25の役割を明らかにすることである。申請者は、ブタクサ花粉誘発アレルギー性結膜炎モデルマウスにおいてIL-33が病態形成に重要であること、さらにはパパイン吸着ソフトコンタクトレンズをマウスに装用させて、自然免疫依存性のアレルギー性角結膜炎モデルを樹立したところ、IL-33, TSLPならびにILC2が病態形成に必須であることを報告した。 しかし、これらの急性期アレルギー性結膜炎マウスモデルではIL-25欠損マウスと野生型マウスとの間で炎症の程度に差はみられなかった。 しかしながら、IL-25がアレルギー性鼻炎の慢性化・重症化に関与していること、IL-25刺激によってiILC2が誘導され、IL-25とtuft細胞との協調作用でアレルギー性炎症が増強されるといった報告があり、IL-25はアレルギーにおいて慢性炎症に関与していることは大いに眼が得られた。これまでにIL-25と慢性重症アレルギー性角結膜炎の病態成立との関連を調べた先行研究はないため、IL-25シグナルがアレルギー性角結膜炎の慢性化ならびに重症化に重要ではないかとの仮説を着想し、新たに慢性アレルギー性結膜炎モデルを作成した。 Tuft細胞との関連はこれまで検討したことがなく、非特異的染色と解釈されてきた結果の中にIL-25陽性Tuft細胞が結膜上皮内に存在していた可能性がある。そこで、Tuft細胞のマーカーである抗-DCAMKL1抗体とIL-25抗体を用い、結膜におけるTuft細胞の局在ならびにIL-25染色を行い、慢性アレルギー性結膜炎マウスモデルのマウス結膜にはIL-25並びにtuft細胞が存在することが判明した。(投稿準備中)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では以下の3つの目標を設定しており、①に関しては予定通り進行している。②、③に関しても順次実験を行っており、予定通りに進行している。 ①アレルギー性角結膜炎におけるIL-25発現の局在の再検証 ②IL-25シグナルを増強したマウス慢性重症結膜炎モデルの作成 ③網羅的遺伝子発現解析(sc-RNAseq)を用いたILCサブタイプの同定と角結膜炎モデルにおける役割の評価 ②に関しては慢性アレルギー性結膜炎マウスモデルはすでに作成の手順は整っているため、今後角結膜上皮細胞に発現するケラチン14のプロモーターを用いてIL-25遺伝子トランスジェニックマウスをBALB/c背景で作成。このマウスを用い、実験の継続を行っていく。③に関しても同様であり、マウスモデルは確立しているため、順次実験を行い解析を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
慢性重症アレルギー性角結膜炎の病態にIL-25シグナルと、それによって活性化されるILC2、ならびにNMUシグナルがどのように関連しているかを明らかにするため、それらのシグナルを増強した状態で、ヒト慢性重症アレルギー性格結膜炎VKC/AKCに似た症状・所見を伴うマウス結膜炎モデルを樹立は成功している。 まず、角結膜上皮細胞に発現するケラチン14のプロモーターを用いてIL-25遺伝子トランスジェニックマウスをBALB/c背景で作成する。このマウスを用い、アレルゲンとしては、精製ダニ抗原とブタクサ花粉、並びにその混合物を皮下免疫し、7日後から結膜増殖反応が得られるまで点眼刺激を継続する。(結膜組織の増殖反応はヒトVKC/AKCにおける特徴的な病理変化であり、今回のマウスモデルにおいても慢性化・重症化の重要な指標である)。慢性重症モデルの成否は結膜増殖反応の他に、結膜の充血、腫脹、流涙といったクリニカルスコア、好酸球浸潤数および結膜組織中の炎症性サイトカインを定量による重症度の評価を元に行う。 網羅的遺伝子発現解析(sc-RNAseq)を用いたILCサブタイプの同定と角結膜炎モデルにおける役割の評価 マウスアレルギー性角結膜炎の発症において、ブタクサ花粉を使用した急性モデルにおいてはIL-33とその下流にあるnatural ILC2(nILC2)が重要な役割を果たしている。一方慢性モデルにおいては我々の仮説が正しければIL-25とiILC2の働きが重要と考えられる。急性モデル、慢性モデルから結膜組織を採取し、FACSを用いてILC2細胞分画を分取、single cell (sc)-RNA seqの手法で、アレルギー性角結膜炎発症時における結膜ILC2細胞をクラスタリングし、急性モデル、慢性モデルにおけるnILC2, iILC2の役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はマウス結膜炎を用いて実験を行うため、結膜炎誘発に関連した消耗品として、ニューロメジンU試薬の購入費用、ブタクサ花粉を、実験的慢性結膜炎マウスモデル作成時や結膜からのILC2分離時に使用する眼科用の縫合糸、鑷子、剪刃、持針器の購入している。ILC2が関与していると考えられている各種ノックアウトマウスの維持費用およびコントロールマウスの購入・維持費用、ならびにジェノタイプに必要な費用などに予定通り使用を行った。研究遂行に当たり、ILC2の同定のためのフローサイトメトリー解析と網羅的遺伝子発現解析が必要でであり、本年度はフローサイトメトリー解析を行わなかったため、予定していた抗体として年30万円を計上しておらず、来年度使用予定である。
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