研究課題/領域番号 |
19K18898
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
石丸 侑希 摂南大学, 薬学部, 助教 (80611607)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アペリン受容体アゴニスト / 糖尿病網膜症 / 網膜神経障害 / 神経保護 / 神経-グリア間相互作用 / APJ / 高脂肪食 |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症では、網膜血管障害が生じることで網膜血管新生や黄斑浮腫が起こり、失明に至ることが知られているが、近年、血管障害に先立って網膜神経障害が起こることや、この神経障害がグリア細胞の機能異常をきたすことで血液網膜関門の破綻を介して血管障害を引き起こすことがわかってきた。これまでに研究代表者は、糖尿病モデルマウスに高脂肪食を負荷することによって視神経細胞である網膜神経節細胞の脱落や網膜の神経活動を反映する網膜電図の低下が生じること、およびGタンパク質共役型受容体の一つとして知られるAPJの内因性リガンドであるアペリンを欠損させることによって、高脂肪食負荷糖尿病モデルマウスで生じる網膜神経節細胞の脱落や網膜電図の低下が早まることを明らかにした。今年度行った検討において、アペリンが網膜のグリア細胞の一種であるミュラー細胞に発現すること、APJが網膜神経節細胞、双極細胞、および視細胞などの種々の網膜神経細胞に発現することを明らかにした。また、糖尿病モデルマウスに高脂肪食を負荷することによって網膜神経節細胞、双極細胞、および視細胞の脱落と網膜電図の低下が生じること、およびこれらの網膜神経障害は、アペリン受容体アゴニストを経口投与することによって著明に抑制されることを見出した。以上の結果から、アペリン-APJシグナルが網膜内の神経-グリア間で機能し網膜内で神経保護の役割を果たしていること、およびアペリン受容体アゴニストが糖尿病網膜症で生じる網膜神経障害を抑制する新たな治療薬となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網膜におけるアペリンおよびAPJの発現細胞を同定できたこと、およびアペリン受容体アゴニストの経口投与によって糖尿病モデルマウスで生じる網膜神経障害を著明に抑制できることを見出したことから、本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高脂肪食負荷による糖尿病モデルマウスで生じる網膜神経障害の機構を解明とアペリン受容体アゴニストの保護作用機構の解明を行う。また、アペリン受容体アゴニストの薬物動態学的パラメータについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の消耗品支出額が計画当初よりも多くなることが予想されたため。 糖尿病モデルマウスの購入・維持費、およびアペリン受容体アゴニストや抗体類などの試薬の購入費に充てる。
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備考 |
網膜変性疾患による視力低下を強力に抑制する新たな治療薬(イノベーション・ジャパン2019) https://www.jst.go.jp/tt/fair/ij2019/exhibitor/jss20190273.html
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