抗VEGF療法前後での眼内環境の変化をマトリセルラー蛋白を中心に解析するために、抗VEGF療法時に採取した前房水と抗VEGF療法後の硝子体手術時に採取した硝子体をサンプルとして解析した。 糖尿病網膜症症例では、抗VEGF療法前から前房水内のペリオスチン濃度はコントロール群に比較して有意に高値であり、抗VEGF療法に抵抗性で抗VEGF療法後に線維化が進行した症例の多くは抗VEGF療法後の前房水内ペリオスチン濃度が上昇傾向にあることを見いだした。同症例における前房水内VEGF濃度は上昇傾向には無いため、VEGFとペリオスチンの相関は低いと考えられた。 また糖尿病網膜症症例の硝子体中のペリオスチン、テネイシンC、フィブロネクチン濃度はコントロール群に比較して有意に高値であった。さらにそれらは全て相関していた。 さらにin vivoではマウス酸素負荷網膜上線維血管増殖組織モデル、in vitroではヒト網膜血管内皮細胞を用いて、ペリオスチンとテネイシンCがともに線維血管増殖を促進し、その促進効果はペリオスチンが大きいことを見いだした。 これらの結果とこれまでの我々の研究結果から、抗VEGF療法誘導性の眼内線維増殖の発症進展にペリオスチンを含むマトリセルラー蛋白が関与していると考えられた。その中でもペリオスチンを標的とした治療が、抗VEGF療法誘導性の眼内線維増殖に対する新規治療となり得ると考えられた。マトリセルラー蛋白は、正常網膜での発現レベルは低く、線維血管増殖組織に特徴的に発現していると考えられるため、 マトリセルラー蛋白を標的とした新規治療を創製できれば、正常網膜にほとんど障害を与えることなく、線維血管増殖組織のみを抑制する病態特異的な治療法となることが期待される。
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