研究課題/領域番号 |
19K18901
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
上田 高志 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (90631573)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 酸化脂質 / 網膜 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリア特異的なglutathione peroxidase (mGPx4)のノックアウトマウスでは男性不妊となることが知られているが、それ以外の発育では異常がないとされてきた。対照的に、全GPx4のノックアウトによってはフェロトーシスと呼ばれる酸化脂質依存性の細胞死によって胎生致死となることが知られている。 本研究ではまず、mGPx4のノックアウトマウスの網膜形態についてヘマトキシリン・エオジン染色にて検討を行った。すると、生後12日目までは特段の網膜の形態異常は認めなかったが、その後、進行性の網膜視細胞死を認めた。mGPx4での欠失によって細胞死が起こること観察した報告は今までにはなかった。 次に、細胞死を来す直前の視細胞内節領域を電子顕微鏡で観察したところ、断面積あたりのミトコンドリアが占める領域は減少するとともに、各ミトコンドリアが占める面積は増大していた。これはfissionの減少とfusionの増加を示唆する所見と推察され、mGPx4欠損によるミトコンドリア障害への代償性の現象と考えられた。 また、錐体視細胞と桿体視細胞のマーカーについて発生段階から免疫染色にて検証した。桿体視細胞の正常な発達・分化・成熟は確認でき、その後、視細胞死と共に数が減少していたことは予想された通りであった。一方で、錐体視細胞は前駆細胞の発生段階からマーカー蛋白質の発言を認めなかった。従って、錐体視細胞の発生において、mGPx4が必要不可欠であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、mGPx4ノックアウトによる視細胞死を明らかにできた。同時に錐体視細胞の発生における重要性も示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
mGPx4ノックアウトによる視細胞死が酸化脂質依存性かどうかをビタミンE補充食等の方法でレスキュー実験を行う。また、錐体細胞の発生についてもメカニズム解析が可能か検討する
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次年度使用額が生じた理由 |
国内学会がウェブ開催に変更された分、費用が圧縮された。次年度に行うメカニズム解析のために使用する計画である。
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