Glutathione peroxidase 4 (GPx4)は細胞生存に不可欠で、特にFerroptosisと呼ばれる制御された非アポトーシスによる細胞死において強力な抑制因子として知られている。GPx4には細胞質型、ミトコンドリア型、核小体型の3つのisoformがあることが知られているが、isoform特異的なGPx4の役割については未だ不明なことが多い。 我々はミトコンドリア型のGPx4(mGPx4)特異的なノックアウト(KO)マウスにおいて視細胞死がおこることを見出した。mGPx4 KOマウスではcone-rod dystrophy様の錐体細胞死が先行する視細胞変性が観察され、ビタミンE付加によりTUNEL陽性で示される視細胞死が抑制された。しかし、網膜電図ではそのレスキュー効果は主に桿体細胞に対するものであった。液体クロマトグラフィー質量分析を行ったところ、興味深いことに、mGPx4欠失網膜では、phosphatidylethanolamine(PE)のsn-1とsn-2の両方にω-3多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)が挿入されたリン脂質の過酸化(PE22:6/22:6-OOH)が有意に亢進していることが判明した。、細胞死メカニズムとしては、ビタミンEで不完全なレスキュー効果があり、PE-PUFAの過酸化が増加していることはferroptosisを示唆していたが、電子顕微鏡像にてクロマチン凝集やcaspase-3の活性化が認められたことから、少なくとも一部はapoptosisによる細胞死と考えられた。
|