研究課題
糖尿病患者では治癒力の低下から皮膚潰瘍が骨にまで達し難治となる。骨髄間葉系幹細胞および脂肪前駆細胞は、糖尿病患者および糖尿病マウスの体内では本来の挙動を示していないことは既に報告されており、本研究ではこの原因として、皮下脂肪と骨髄に着目して研究を進めた。その中で、糖尿病モデルマウス(Leprdb/db)の皮下脂肪を非糖尿病モデルマウス(Leprdb/+)に移植した場合著しく創傷治癒が遅延したことから、皮下脂肪に焦点を当て、詳細な検討を行った。結果、糖尿病モデルマウスの創傷治癒過程で皮下脂肪に存在する間葉系細胞の細胞老化が非糖尿病モデルマウスと比較して異常化し、創傷治癒を阻害していることが明らかになった。細胞老化は、細胞にダメージが加わったときに異常な増殖を防ぐための生体防御システムであり、老化細胞はすぐには死滅せずに自らの増殖を止めると様々な因子の分泌現象(senescent associated secretary phenotype; SASP)を起こす。糖尿病の難治性創傷では、皮下脂肪のSASPが治癒経過に影響するのではないかと考え、糖尿病モデルマウスおよび非糖尿病モデルマウスの皮下脂肪組織から培養上清を回収し、メンブレン抗体アレイを行ったところ、構成タンパク質が異なっていた。さらに、皮膚由来線維芽細胞に糖尿病モデルマウスおよび非糖尿病モデルマウスの皮下脂肪由来分泌物を添加培養してスクラッチアッセイを行ったところ、糖尿病モデルマウス由来分泌物は線維芽細胞の増殖を抑制したことから、糖尿病の皮下脂肪由来の分泌物が皮膚の創傷治癒に影響することが推測された。ヒトでも同様の現象が起こっているか検討したところ、非糖尿病患者の潰瘍組織では時間経過とともに老化細胞は減少傾向であるのに対し、糖尿病患者では老化細胞が蓄積しており、マウスを用いた解析と矛盾しない結果であった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Communications biology
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Stem cells translational medicine
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