研究課題
先進国においては、悪性腫瘍切除後の二次性リンパ浮腫患者が増加している。私はこれまでの一連の臨床・研究活動を通して、リンパ浮腫の治療技術を世界に発信してきたが、これまでの治療法が奏功しない難治性リンパ浮腫の患者はまだまだ数多く存在する。本研究では、脂肪由来間葉系幹細胞(Adipose-derived Stem Cell: ASC)が分泌する細胞外小胞体であるエクソソームを通したリンパ管再生療法の可能性を検討した。in vitroで、Adipose derived stem cell(ASC)エクソソームをヒトリンパ管内皮細胞(Lymphatic Endothelial Cell: LEC)に投与し、PCR-arrayによる網羅的遺伝子解析を行った。変動遺伝子やシグナル伝達経路を同定、分析した。さらに、ASCエクソソームとHEK-293細胞のエクソソームを、網羅的遺伝子解析で比較し、 ASCエクソソームに特に多く含まれるmiRNAなどの候補分子を同定した。候補分子の働きをIPAソフトウェアを用い解析し、ASCエクソソーム中のmiRNAとリンパ管新生を誘導する因子群をマッピングし、リンパ管新生を促しリンパ浮腫治療候補となるmiRNAをグループ化した。また、リンパ浮腫モデルマウスを使った実験では、ASCエクソソーム投与側で、周径の改善が認められ、小動物用CTやICG蛍光リンパ管造影でも、リンパ浮腫の改善が認められた。組織像の検索では、ASCエクソソーム投与側で、血管新生およびリンパ管新生の亢進が認められた。エクソソーム投与は、細胞を移植しないため、他家移植による製剤化も可能であり、再生医療の実用化が大いに期待される。
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