ヒトをはじめ、哺乳類の皮膚はいったんある程度以上の損傷を受けると、瘢痕が必ず形成される。近年、「メカニカルストレス」が皮膚の瘢痕形成に関連する分子基盤が明らかとなりつつある。本研究においては、皮膚の創傷部位で炎症性サイトカインの一種であるIL-11が高発現するという申請者の予備的知見を背景に、IL-11が創傷治癒にどのような影響を与えるか解明するのが目的である。 まず創傷部位においてメカニカルストレス下における創傷治癒への影響を詳細に確認した。C57Bl/6Jマウス(オス、8週齢)の背部に創傷を作成し、30分間用手的にマッサージを加えることによってメカニカルストレスを与えるモデルマウスを作成した。用手的マッサージを5日連続で付加したマウスを作成し解析を行った。メカニカルストレスが創傷において炎症を惹起することを再確認するため、創傷にメカニカルストレスを付加したマウスと付加しないマウスの組織を比較し、メカニカルストレス下における創傷の炎症反応について免疫組織学的に解析を行った。さらにメカニカルストレスにおける肉芽形成の違いを免疫組織学的に比較した。続いてIL-11とメカニカルストレスとの関連について解析を行った。モデルマウスの瘢痕組織をqPCRに解析を行ったIL-11に加え、関連する炎症性サイトカインについて比較を行った。さらにIL-11の組織における影響を評価するため浸透圧ポンプ(alzet)によるrecombinant IL-11及び抗IL-11RA(受容体α鎖)に対する抗体の投与を行いin vivoにおける解析を行った。
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