研究課題/領域番号 |
19K18917
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鎌田 将史 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60815950)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 口唇口蓋裂 |
研究実績の概要 |
口唇・口蓋裂は、本邦において約500人に1人の割合で発生し、先天性の外表奇形としては最も頻度の高い疾患のひとつであるが、現在可能な治療は発症後に段階的な手術治療を行うことによって整容および機能障害を最小限にとどめることのみであり、予防的治療の開発が社会的に望まれている。口唇口蓋裂の多くは多因子遺伝や環境要因が複雑に絡み合った結果生じるものであり、詳細なメカニズムはほとんど分かっていない。本研究では、正常の口蓋形成過程、また口蓋裂モデル動物における口蓋形成過程を調べることによって、口蓋裂発症のメカニズムの一端を明らかにすることを目的としている。本年度は、主にFucciマウスを用いて口蓋の発生過程における細胞周期の状態を観察する研究を行った。胎生14~16日目のマウス胎仔の頭部前額断の免疫染色標本を作製し、蛍光顕微鏡による観察を行ったところ、この胎齢において、左右の口蓋棚が徐々に伸展して正中で癒合する様子が観察された。伸展する口蓋組織におけるFucciマウスの蛍光発現を観察したところ、細胞周期について、上皮細胞のほとんどは休止期にあり、一方、間葉系細胞のほとんどは盛んに増殖していることが示唆された。細胞の増殖やアポトーシスについては、今後免疫染色や遺伝子発現解析を追加して詳細にしらべる予定である。また、血管・リンパ管新生と口蓋発生との関連については、口蓋組織において盛んに血管新生が起こる様子が観察可能であったが、リンパ管は少数であることが示唆された。今後、胎齢ごとの比較および口蓋裂モデル動物との比較を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス胎仔の免疫染色標本を共焦点顕微鏡で観察することによって、胎齢の進行とともに口蓋が癒合する様子が時系列で観察可能であった。組織が微細・脆弱であることからその観察数には限界があるが、Fucciマウスのみでなく野生型マウス胎仔の免疫染色による観察と組み合わせることによって、さらに詳細な検討が可能となる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究により、組織学的解析手法については概ね確立されつつある。細胞増殖、アポトーシス、上皮・間葉転換、血管・リンパ管新生などとの関連について今後Fucciマウスおよび野生型マウスを用いて詳細な検討を進める予定である。また、口蓋裂モデルマウスの導入によって野生型との比較研究も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、主に生体マウスを用いた観察を中心としている。本年度はFucciマウスを中心に解析を進めたが、出産数に制限があったため、当初の予定よりも若干解析数が少なかったため、使用する試薬や抗体などの量が少なくなったと分析している。次年度は遺伝子改変動物を含めた購入費用が増加する可能性が高く、次年度使用額はそれらに対して充当する予定である。
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