研究実績の概要 |
本研究においては、神経力源の変化に伴い、筋線維のtypeが変化するかどうかを検討した。 一般的に骨格筋は遅い運動や持続的な筋緊張に寄与する遅筋(Type1)、瞬発的な運動を司る速筋(Type2)、その中間の特性を持つ中間筋に分類される。Type2においてはさらにType2A、Type2B、Type2Xに細分化される。(Type2Aは2Bに比べて遅筋に近い性質を持つ。2Xは2Aと2Bの中間の性質を持つ。)本研究では、ラットの咬筋の筋線維のtype分類がその運動神経支配を変えることにより変化するか否かを検証した。ラットの咬筋の浅層はType2のみから構成されることがわかっている。一方、舌下神経は舌を支配し、舌筋はType1とtype2の両方から構成されるとされる。本研究では、10週齢のSDラットを用いて、3つのモデル (Group1:咬筋神経の遠位断端を舌下神経の近位断端と端々縫合し、咬筋神経近位断端を神経切除する群, Group2:咬筋神経の近位断端を切除して神経再支配を予防し、神経縫合を行わない群, Group3:コントロール群)を作成した。それらの咬筋浅層を手術から2か月後に採取し、組織学的検討と、マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。n数はそれぞれGroup1で6、Group2で4、Group3で6であった。 組織学的検討では、コントロール群において筋線維はほぼType2Bで構成されていたが、Group1で一部の筋線維がType1へと変化したのが確認できた。またGroup2では、Type2Xへの変化が示唆された。 マイクロアレイでは、Group1において、Group2および3と比較して筋体のミトコンドリア生合成および酸化容量に強くかかわるPerm1遺伝子の発現亢進を認めた。このことからも、神経支配の変化に伴い、筋体そのものの性質が変化した可能性があると考えられた。
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