研究課題/領域番号 |
19K18938
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
井野 康 久留米大学, 医学部, 講師 (30352181)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 感染性皮膚潰瘍 / 細菌数 |
研究実績の概要 |
(2019年度) 1.ラット感染潰瘍モデル(対照モデル)の作成と潰瘍評価 Wister系ラットを清浄飼育室にて飼育し、餌および水は常時摂取可能とする。ラットの背部皮下に細菌 (5 x 108 cfu程度用いる)を接種する。なお、細菌性皮膚感染症の原因菌として多い黄色ブドウ球菌と緑膿菌で検討する。翌日、イソフルラン2-3%麻酔下にラットの背側皮膚にハサミを用いて、細菌を接種させた部位に10x10mmの皮膚潰瘍を作製する。細菌接種後1,3,5,7日目に創傷治癒過程の個体を順次麻酔下に固定し,組織学的解析試料を作製する。創傷の評価は以下の項目を測定して行う。1) 皮膚欠損創の大きさ;長径とそれと直行する短径をスケールで計測する。2) 肉芽組織内の細胞種(線維芽細胞、血管内皮細胞およびマクロファージ等の炎症細胞)の構成比や形態および定量解析;免疫化学染色法を用いるが、HSP47で線維芽細胞を、Iba-1でマクロファージを、血管内皮細胞をCD31で染めて1視野内の細胞数を数える。3) 肉芽組織のコラーゲン定量;肉芽形成期の早期にはコラーゲンⅢ型が増加し、その後創傷治癒過程が進むとコラーゲンⅢ型はⅠ型に置換される。免疫染色で経時的変化をコラーゲンⅠ,Ⅲ型各々染色して観察する。4) 肉芽組織内の細菌数の定量;潰瘍面を綿棒で拭い、細菌数測定装置(細菌カウンタ)で細菌濃度(cfu/ml)を測定する。感染創の出来が悪い時は菌体濃度を上げる。 1)と4)に関しては概ね実践できており、2)、3)に関しても解析できる状態となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(2019年度) 1.ラット感染潰瘍モデル(対照モデル)の作成と潰瘍評価 Wister系ラットを清浄飼育室にて飼育し、餌および水は常時摂取可能とする。ラットの背部皮下に細菌 (5 x 108 cfu程度用いる)を接種する。なお、細菌性皮膚感染症の原因菌として多い黄色ブドウ球菌と緑膿菌で検討する。翌日、イソフルラン2-3%麻酔下にラットの背側皮膚にハサミを用いて、細菌を接種させた部位に10x10mmの皮膚潰瘍を作製する。細菌接種後1,3,5,7日目に創傷治癒過程の個体を順次麻酔下に固定し,組織学的解析試料を作製する。創傷の評価は以下の項目を測定して行う。1) 皮膚欠損創の大きさ;長径とそれと直行する短径をスケールで計測する。2) 肉芽組織内の細胞種(線維芽細胞、血管内皮細胞およびマクロファージ等の炎症細胞)の構成比や形態および定量解析;免疫化学染色法を用いるが、HSP47で線維芽細胞を、Iba-1でマクロファージを、血管内皮細胞をCD31で染めて1視野内の細胞数を数える。3) 肉芽組織のコラーゲン定量;肉芽形成期の早期にはコラーゲンⅢ型が増加し、その後創傷治癒過程が進むとコラーゲンⅢ型はⅠ型に置換される。免疫染色で経時的変化をコラーゲンⅠ,Ⅲ型各々染色して観察する。4) 肉芽組織内の細菌数の定量;潰瘍面を綿棒で拭い、細菌数測定装置(細菌カウンタ)で細菌濃度(cfu/ml)を測定する。感染創の出来が悪い時は菌体濃度を上げる。 1)と4)に関しては概ね実践できており、2)、3)に関しても解析できる状態となっている。
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今後の研究の推進方策 |
(2020年度)局所陰圧閉鎖療法は陰圧のみを創部にかける。一方、「創内持続陰圧洗浄療法」は生理食塩水を用いて潰瘍面を持続的に洗浄する。流速は3~10 ml/h、吸引圧は-50cm H2Oで行う。開始後1,3,5,7日目での組織像を、前述の1)から4)で比較して評価する。 (2021年度)「創内持続陰圧洗浄療法」に抗菌ペプチドを併用し、治療開始後1,3,5,7日目での組織像を、前述の1)から4)で比較して評価する。使用する抗菌ペプチドとしては、αーディフェンシン、βーディフェンシン、LL-37、ヒスタチンなどを用いる。また、使用する抗菌ペプチドの濃度は、10~100nM程度から始め、効果を調べながら濃度を増減していく。これらは各ペプチドに少しずつ抗菌活性や安定性が異なるため、感染菌の種類によって最適な抗菌ペプチドを見出していく。抗菌ペプチドの投与方法に関しても、「創内持続陰圧洗浄療法」の持続洗浄に用いる生理食塩水に溶解して使用する方法と、抗菌ペプチド液を含んだアルゼット浸透圧ポンプを使って創傷部の閉鎖空間に設置する方法の2つを検討する。 (2022年度)血管拡張性の循環調節ペプチドを、作成したラットの感染潰瘍モデルに投与し、血流改善を行うことで、創傷治癒を早めることができるかどうかを検討する。血管拡張性の循環調節ペプチドとしては、心臓から分泌されるナトリウム利尿ペプチドや、副腎髄質から分泌されるアドレノメデュリンを用いる。これらの生理活性ペプチドは微小血管に対して非常に強力な血管拡張作用があるので、潰瘍局所に持続投与することで、血流改善効果が期待できる。 以上の研究により、感染性潰瘍に対する「創内持続陰圧洗浄療法」と抗菌ペプチドおよび循環調節系ペプチドの併用治療がもたらす効果を明らかにできる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラットや実験消耗品の使用を継続するため、また学会発表や論文掲載を行うためです。
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