研究課題/領域番号 |
19K18951
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
壇辻 昌典 昭和大学, 歯学部, 助教 (60826634)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セロトニン神経系 / 咀嚼運動 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
近年、本国では超高齢社会に伴い、摂食、嚥下などの口から食べることへの関心が高まっている。生活の場で、できる限り自立を続けるためには咀嚼機能の維持・回復は重要であり、健康寿命の延伸に欠かせない命題である。 しかし、未だ咀嚼の中枢制御メカニズムは明らかにされていない。セロトニン神経系は咀嚼のリズミカルな運動時に活性化し、咀嚼時の筋活動に影響する可能性がある。我々はこれまでに咬筋を支配する咬筋運動ニューロンの樹状突起上にある5-HT2A受容体の活性化がNMDA受容体の機能を亢進させて、グルタミン酸を伝達物質とする興奮性シナプス伝達を増強することを見出し、その細胞内メカニズムを明らかにした。しかし、セロトニン神経系が実際の咀嚼に影響しているのか、しているとすれば、どのように咀嚼パターンを変化させているかは不明である。そこで本研究は、これまでの結果を発展させ、近年開発された光遺伝学を利用して、咀嚼時にセロトニン神経の活動のみを亢進、あるいは抑制することで、セロトニン神経と咀嚼運動の関連性を明らかにすることを目的とする。セロトニン神経特異的に光感受性タンパク質のChR2を発現させた遺伝子改変マウスを用いてセロトニンが咀嚼運動に関与するかを検討した。セロトニン神経細胞が存在する背側縫線核付近に光ファイバーを刺入し、セロトニン神経に光照射を行った。さらに、咀嚼筋に筋電図を装着し、筋活動を同時に記録した。自由行動下で光照射したところ、咬筋活動が増大した。また、24時間の絶食後、餌を与え、咀嚼中に光照射し、咬筋活動を解析したところ咀嚼リズムが速くなり、筋活動の振幅が小さくなることが明らかになった。セロトニン神経による咀嚼運動の変化には5-HT2ARが関与すること明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セロトニン神経特異的に光感受性タンパク質のChR2を発現させた遺伝子改変マウスを用いてセロトニンが咀嚼運動に関与するかを検討した。咀嚼運動を閉口筋、開口筋の筋電図記録により解析したところ、咀嚼中の背側縫線核のセロトニン神経の活性化は咀嚼リズムと咬筋活動を大きく変化させることを明らかにした。三叉神経運動ニューロンや咀嚼のCPGが存在するとされている脳幹へ多く投射する尾側縫線核のセロトニン神経の活性化では咀嚼運動への影響はほとんどないが、安静時の咬筋活動を引き起こすことが明らかとなった。現在結果をまとめ論文を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で背側縫線核のセロトニン神経が咀嚼運動に影響することが明らかっとなった。しかし背側縫線核のセロトニン神経は大脳基底核や扁桃体、海馬、大脳皮質などその投射先は多様である。そこでセロトニン神経系がどのように咀嚼運動を変調させるかを明らかにするため、関連する投射先の同定と作用機序を探索する
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより学会への発表がほとんど行われなかった。またサンプル数ももう少し必要なため論文の投稿が遅れているため次年度使用額が生じている。今後はもう少しサンプル数を足すため実験に必要な消耗品と論文の投稿料に使用する予定である。また結果を海外等の学会でも発表する予定である。
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