研究課題/領域番号 |
19K18953
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
佐藤 涼一 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (80801472)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 概日リズム / 時計遺伝子 / 唾液分泌 / 唾液腺 / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
安静時唾液の分泌量には日中に増加、夜間に減少をする概日リズム(サーカディアンリズム)が存在する。就寝時の唾液分泌量の減少は齲蝕リスクの増加や就寝前口腔清掃の重要性を示す根拠とされているが、唾液分泌の概日リズムを調節するメカニズムは明らかにされていない。申請者は顎下腺の水分泌・浸透圧調節を行うイオンチャネル群の発現に概日リズムを発見し、時計遺伝子によって制御を受ける新知見を得た。本研究は唾液分泌の概日リズムメカニズムと調節因子を明らかにすることを目的とする。さらに、唾液腺末梢時計と分泌唾液の時計遺伝子解析から、唾液を試料とした簡便かつ非侵襲性の新規概日リズム測定法の開発を本研究では目指している。 本年度は12時間周期の明暗環境で飼育したラット群と恒暗環境のみで飼育したラット群を作成し、それぞれのラット顎下腺における時計遺伝子のmRNAおよびタンパク発現を経時的に測定することで周囲の明暗環境が顎下腺の時計遺伝子や唾液分泌関連イオンチャネルに与える影響を検討した。その結果、恒暗環境において時計遺伝子はリズムを維持するが、顎下腺内で水分泌・浸透圧調節に関連するイオンチャネルであるAquaporin5(Aqp5)およびカルシウム依存性クロライドチャネルAnoctamin1 (Ano1)のmRNA発現ピークは恒暗環境のみ6時間前進する新知見を得た。また、Western Blot法によりこのピークの前進はタンパク発現でも同様に維持されることが明らかとなった。H31年度は本知見を原著論文1編にまとめ、学会報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は概日リズムを有する顎下腺 水分泌・浸透圧調節関連イオンチャネルの検索をテーマに顎下腺内で水分泌・浸透圧調節に関連する複数のイオンチャネルmRNAおよびタンパク発現を経時的に測定し、概日リズムの存在を明らかにすることを目的とした。本年度、申請者は水分泌関連イオンチャネルのうちAqp5, Ano1に概日リズムを確認し、周囲環境の明暗がリズムピークに影響を与えることを報告した。さらにラット顎下腺にて唾液分泌に関連する複数のイオンチャネルmRNAピーク時刻が一致する新知見を得て、現在タンパク発現を測定している。次年度に計画している実験の準備も進んでおり、研究はおおむね計画通りに進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ラット顎下腺において概日リズム発現とピーク時刻一致が確認された唾液分泌関連イオンチャネルに対し、定量RT-PCRによる相対発現量の測定とWestern Blot法による検討を実施する。また、ラット顎下腺をベースにした唾液腺細胞株の培養を開始し、時計遺伝子Bmal1プロモーター領域を組み込んだ発光ベクターの作成・遺伝子導入などの実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に消費税の誤差で1円繰り越しとなってしまった。次年度予算と合わせて試薬の購入に使用する。
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