研究課題
Secreted frizzled-related protein 5(Sfrp5)はWntシグナルのアンタゴニストである。申請者はSfrp5が骨芽細胞の分化を促進し、生体の骨形成を促進することを発見した。一方、WntアンタゴニストであるSfrp5が骨量を増加させる機序は未解明である。本課題は、Sfrp5の骨への作用の詳細な分子機序を明らかにし、骨粗鬆症治療に応用するための基盤を築くことを目的とした。①Sfrp5を添加した初代培養骨芽細胞のRNAシーケンス解析を実施し、Sfrp5によって変動するシグナル経路Aを同定した。シグナル経路Aで働く転写因子をshRNAおよび阻害薬で抑制すると、Sfrp5の作用が解消されることも確かめた。②Sfrp5と相互作用する因子を共免疫沈降により検出し、質量分析を行って候補蛋白質21個の同定に成功した。③レポーターマウス(Axin2-cre/ERT2;CAG-tdTomato)とSfrp5欠損マウスを利用して、Sfrp5が骨組織の古典的Wnt経路を制御することを確認した。④CAGプロモーター下でSfrp5を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製した。骨細胞・骨芽細胞への遺伝子導入と蛋白質発現を確認し、マイクロCTで8週齢の大腿骨の海綿骨量を確認したが、本モデルでは骨量に影響がみられなかった。本課題により、Sfrp5が骨形成を促進する機序の核心に迫ることができた。ただ、Sfrp5と相互作用する候補蛋白質とシグナル経路Aの関連性について、まだ詰め切れていない。また、発生段階から全身でSfrp5を過剰発現するマウスでは骨量に有意差がみられなかったため、後天的なSfrp5過剰発現モデルマウスの構築も必要である。引き続き、研究を継続する予定である。
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Journal of Pediatric Genetics
巻: - ページ: -
10.1055/s-0041-1726282
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 13751
10.1038/s41598-020-70817-1