口腔癌細胞の代謝活性と環境因子の関連をリアルタイムモニタリング法で探る

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K18957
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 森島 浩允 東北大学, 大学病院, 医員 (30825740)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 口腔がん / がん細胞の代謝 / メタボローム

研究実績の概要

私たちはこれまでに細胞の代謝活性をリアルタイムにモニタリングするシステムを構築し、さらに環境因子の一つであるpHが口腔扁平上皮がん細胞の糖・アミノ酸代謝活性へ及ぼす影響を評価することで、正常細胞とがん細胞の間に違いがみられたことなど、一定の成果を得て報告を行ってきた。本年度は、これまでに確立したモニタリングシステムを応用し、実際のがん細胞周囲の微小環境をより再現するような酸素分圧や培養環境などの他の様々な環境因子や、抗癌剤などの薬剤によるがん細胞の代謝活性への影響を評価するためのさらなる準備を進めてきた。特に酸素濃度の影響を調べるための新たな実験システムを立ち上げるため、当研究室で保有している低酸素環境実験システムと前述の代謝活性測定システムを組み合わせた新システムの立ち上げに尽力した。また、口腔扁平上皮がん細胞の種類に関してもバリエーションを増やしていくことを検討している。これまでの予備実験の結果では、大気環境下と低酸素環境下での細胞の代謝活性を比較すると、その糖代謝活性に何らかの違いが見られる傾向があった。これらの結果をふまえて次年度以降は、それぞれの検証を行いつつ、様々な環境因子を、単一的または複合的に加えた場合のがん細胞の代謝活性への影響を調べ、また、代謝産物を詳細に分析するためのメタボローム的視点も含めながら、口腔扁平上皮がんの代謝動態や代謝経路へおよぼす周囲環境因子の影響をさらに明らかにしていきたい。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の予定では、もう少し広範な実験結果を得るところまでを想定していたが、酸素濃度の影響を評価するための新システム作りに時間を費やしたため、この区分とした。しかし、次年度以降に、実験遂行をスムーズに進めるための準備は十分に整えられたため、次年度に取り返せるものと考えている。

今後の研究の推進方策

本年度に確立した新実験システムを活用し、酸素環境条件やpH環境などの諸環境因子の影響を単一的、複合的に加えた際の影響を明らかにしていくほか、これまで用いてきた口腔扁平上皮癌のcell lineに加え、臨床株や他癌種なども用いて研究を進め、比較分析していきたい。また、得られた結果を、公表する準備も合わせて進めていきたい。

次年度使用額が生じた理由

新たな実験システムの構築途中であり、今後実験開始となった際に追加の細胞や、必要な物品を購入していく予定であるため。