研究課題/領域番号 |
19K18958
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
菅野 直美 (石橋直美) 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30738539)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | p62 / LC3A / LC3B / 口腔がん / 腫瘍周辺正常上皮 |
研究実績の概要 |
筑波大学附属病院歯科口腔外科にて1997 年から 2009 年の間 に外科的切除を受けた 71 名の口腔がん患者のホルマリン固定パラフィン包埋組織ブロック標本を試料として、口腔扁平上皮がん切除マージン部分におけるオートファジーおよび酸化ストレス関連タンパク質(p62、LC3A、LC3B、p53、γH2AX、8-OHdG)の発現を免疫組織染色にて解析し、その臨床病態との関連を検討した。オートファジー関連タンパク質である p62、LC3A、LC3Bの発現は、いずれも口腔がんの局所再発の有無との間に有意差を認めた。一方で腫瘍関連死については、LC3A およびLC3B の発現との間には有意差を認めたが、p62との間には有意差が認められなかった。p62 は細胞内に発生した異常タンパク質に対し、ユビキチンタンパク質を介して結合し、さらに LC3A および LC3B と結合することでオートファジーの一部である選択的オートファジーが進行、異常タンパク質が分解されると報告されている。この際 p62 および多くの LC3A、LC3Bも分解されるが、 何らかの原因で選択的オートファジーが停滞すると分解されず蓄積する。つまり p62 や LC3A、LC3B が蓄積している状態は、オートファジーの異常を意味する可能性があると考えられた。口腔がんの局所再発が発生した場合、病理学的に正常と診断された正常粘膜上皮にもオートファジー異常が発生している可能性が高いことを明らかにした。また腫瘍関連死については、選択的オートファジーに特異的なタンパク質であるLC3A、LC3Bの発現との間に有意差を認めたが、多機能のタンパク質であるp62の発現との間には優位差を認めなかったことから、特に選択的オートファジーの異常が予後不良に導いている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、口腔がんの外科的切除後の局所再発や転移が起こるメカニズムを酸化ストレス応答に着目して明らかにすることである。口腔癌切除マージン部分においてp62やLC3A、LC3Bが蓄積している状態は、オートファジーの異常を意味する可能性があり、口腔がんの局所再発が発生した場合、病理学的に正常と診断された正常粘膜上皮にもオートファジー異常が発生している可能性が高いことを明らかにした。本研究のおおよそ半分までの進捗状況であり、今後は、p62やLC3A、LC3BをtargetとするmiRNAの発現動態を評価することで、オートファジー関連タンパク質を介するmiRNAの発がんへの関与についても明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度で、口腔がんの切除マージン部分でのオートファジーおよび酸化ストレス関連タンパク質の発現状態および臨床的意義について評価したため、次年度は口腔前がん病変組織中での上記タンパク質の発現状態とがんへの移行との関連性を明らかにし、さらには、p62やLC3A、LC3Bをtarget geneとするmicroRNAの発がんへの関与の解明を行い、口腔がん進展におけるオートファジーおよび酸化ストレス関連タンパク質の分子機能を解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の調達等が予定よりも安価にできたため、今年度の研究計画の中で未使用額が生じた。また、初年度よりも次年度での解析項目が多いため、初年度で行えた研究の残額を次年度使用分とした。
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