本研究では、フッ化ピリミジン系薬剤による口内炎を発症した患者の口腔内細菌叢に着目し、口内炎の重症群と軽症群においてフッ化ピリミジン系薬剤投与前の 口腔内細菌叢を比較することで、口内炎を増悪または予防する細菌を同定することを目的としました。しかし、近年の口腔ケアの進歩により、口内炎発症群11 例、口内炎非発症群29例であり、口内炎の発症数が少ない結果でした。そのため、当初は口内炎重症群と軽症群の口腔内細菌叢を比較する予定でしたが、本研究では口内炎発症群と口内炎非発症群の口腔内細菌叢を比較することで、口内炎を発症または予防する細菌の同定に目的を変更しました。2020年度に予定していた40例の検体を採取したため、予定通り口腔内細菌叢の解析を行いました。全体としては、口内炎発症群と口内炎非発症群のdiversityには差は認めませんでした。また、phylumレベルでは有意差はありませんでしたが、genusレベルにおいて、ClostridialesFamily XIII、Peptostreptococcus、Atopobium、Treponemaで口内炎非発症群で有意に多く認め、speciesレベルにおいては、 口内炎非発症群で有意に多く見られる菌が2菌認められ、口内炎発症を予防する菌の可能性が考えられました。現在、それらの菌を唾液検体から単離培養を行っており、単離培養可能であった場合には、それらの菌と細胞株を共培養することで、proliferationやmigrationの評価を行います。同定菌の細胞への影響が確認された場合、メカニズムの検討をするため、細胞のmRNAマイクロアレイを予定しています。
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