研究課題/領域番号 |
19K18965
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
牛尾 綾 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (40823836)
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研究期間 (年度) |
2021-11-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患モデルマウス / 性差 |
研究実績の概要 |
シェーグレン症候群(以下、SS)は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺を標的とする自己免疫疾患であり、臨床的にはドライアイ・ドライマウスなどの症状を示すことにより患者のQOLを低下させる。SSは主に中年以降の女性に優位に発症することが知られており、SSにおいてみられる性差は自己免疫疾患の中でも特に大きい。この原因のひとつとして性ホルモンの影響が考えられている。研究代表者の所属する研究室では、生後3日目に胸腺を摘出することによりSS患者同様の症状を示すSSモデルマウスを使用し研究を進めているが、このマウスにおいても雌優位に、様々な組織でリンパ球浸潤を主とするSS様病変が観察される。 また、これまでの研究でSSの涙腺・唾液腺にみられる病変では、T細胞、あるいは時間経過とともに(炎症の慢性化と共に)B細胞が多く浸潤してきていることが知られているが、これらの細胞が標的臓器に浸潤してくる為には標的臓器に常在するマクロファージなどの自然免疫細胞が重要な役割を担うことを、本研究課題1年目(海外留学による中断前)に明らかにしている。そこで、本研究では雄及び雌SSモデルマウスの標的臓器における各種免疫細胞について、特に自然免疫細胞に着目して解析・比較することで、自然免疫を介したSS発症機構に性差がどのように影響するのかについて検討する。 これまでの研究で我々のモデルマウスでは雌優位に病態の形成がみられることはわかっていたが、詳細な各組織のデータを経時的に観察したものはなかった。今回、SSの発症はモデルマウスにおいて比較的早い段階(4-6週齢ごろ)から認められ、発症初期の段階から慢性化に至るまで病態は涙腺・唾液腺を含む様々な臓器で雌優位に認められることがわかった。今後は自然免疫細胞を中心として病態形成に関わる免疫細胞の詳細について雄雌で比較していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は海外における研究滞在により中断期間を有した為、研究再開後新たにモデルマウスを作成していく必要があったこと、さらに2022年度は研究再開後半年程しか研究期間がなかったことから進捗状況としてはやや遅れていると考える。しかしながら、最近では多くのモデルマウスを効率よく産生・解析できており、今後は遅れを取り戻すことが可能であると考える。 海外での研究経験で得られた知見を研究に活かすことでより良い研究成果を導き出すことができると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
雄及び雌のSSモデルマウスを効率的に産生し、涙腺・唾液腺などの標的臓器に存在する自然免疫細胞を解析し、サイトカイン産生などにも焦点を当てて検討することで、SSの病態形成における自然免疫細胞の役割について検討するとともにSSに観察される性差についても考察する。また、隣接するリンパ組織や臓器に浸潤しているT細胞・B細胞についても解析を進めることで、自然免疫細胞が自己反応性のT細胞、B細胞に与える影響についても検討していく予定である。その際に性ホルモンの影響について検討するために、卵巣摘出雌SSモデルマウスなどの使用も検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本での研究再開からマウスの作成に準備時間を要した為、新たな物品を多く購入しての研究に本年度は至らなかったため次年度使用額が生じた。 次年度はフローサイトメーターや免疫染色による各種免疫細胞について解析をする予定のため、翌年度分として請求した研究費と併せて様々な試薬の購入に使用する予定である。
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